SpaceXやOpenAI、Anthropicといった大型未上場企業のIPOが同時期に集中した場合、米株式市場で巨額の資金が吸収されるとの警戒が強まっている。企業価値の大きさに加え、上場時に市場へ出回る株数が限られる可能性もあり、株式市場だけでなく暗号資産を含むリスク資産全体に影響が及ぶとの見方もある。
ブロックチェーン系メディアのCryptopolitanが3日(現地時間)に報じたところによると、ベンチャー投資家でアナリストのトマシ・トゥングズは、SpaceX、OpenAI、Anthropicの3社を合わせた企業価値が最大3兆ドル(約450兆円)に達する可能性があると予測した。
そのうえで、発行済み株式の約20%が市場で流通すると仮定すると、IPOで市場が吸収する資金は4320億〜5760億ドル(約64兆8000億〜86兆4000億円)に上る計算になる。Cryptopolitanは、これは過去10年間に米企業がIPOで調達した資金総額を上回る水準だと分析している。
上場候補はこの3社にとどまらない。暗号資産取引所Kraken、防衛スタートアップAnduril、デザインプラットフォームCanvaなどの大型案件も控えており、新規上場銘柄に資金が一段と集中する可能性がある。
市場関係者が注目しているのは、企業価値の大きさだけではない。焦点となっているのは、上場後に実際に売買される流通株、いわゆるフリーフロートの少なさだ。一部企業では、上場時に市場へ出回る株数が全体の3〜8%にとどまるとの見方も出ている。
流通株が少なければ、需給の偏りで株価は大きく振れやすい。時価総額が大きく見えても、実際に売買可能な株数が限られるため、主要指数への組み入れ時にも流動性とのギャップが生じやすいとの指摘がある。
こうした構図を、過去の暗号資産市場におけるトークン上場になぞらえる見方もある。2021年の強気相場では、初期流通量を絞り、長期ロックアップを組み合わせて高い時価総額を演出した案件が相次いだ。その後、ロックアップ解除に伴って大量の供給が市場に流れ込み、価格が急落し、しわ寄せが個人投資家に及んだとの批判も出た。
典型例として取り沙汰されているのがSpaceXだ。市場では、同社が発行済み株式の約5%のみを流通させる形で上場する可能性があるとみられている。この場合、残る95%は既存投資家や社内関係者が保有することになる。上場申請書類のS-1では、基本的なロックアップ期間は180日とされる。
ただ、一部株主については初回の四半期決算発表後に前倒しで売却制限が解除される可能性があるという。さらに、一定条件を満たせば追加の株式が市場に出る仕組みも盛り込まれるとされ、公募価格比で株価が30%超上昇した場合には、早期売却の対象となる持ち分が増える可能性がある。早期解除の対象株式として、さらに10%分が市場に出回り得るとの見方も伝えられている。
規制環境の変化も変数だ。報道によると、NasdaqはSpaceXの上場手続きを従来より大幅に短縮する案を検討している。S&P指数についても、一部の収益性要件の緩和により、大型成長企業を早期に組み入れやすい余地が残されているという。
こうした条件が重なれば、年金基金や機関投資家の資金が新規上場銘柄に大きく流入する可能性がある。記事では、最大30兆ドル(約4500兆円)規模の年金マネーが、これら銘柄を間接的に組み入れる形になる可能性にも触れている。
バリュエーションを巡る見方も割れている。SpaceXの想定公募価格は1株135ドル(約2万250円)前後とされる一方、一部のオンチェーン取引プラットフォームでは700ドル超(約10万5000円)で取引されているという。上場前の期待値と実際の公募価格の間には、大きな開きがある。
今後数カ月は、これらの大型IPOが投資家資金をどの程度吸収するかが最大の焦点となる。AIや宇宙関連企業の超大型上場が現実味を帯びれば、暗号資産を含む他のリスク資産市場に向かう資金が細る可能性もある。
市場では、2026年のIPO市場は単なる上場ラッシュにとどまらず、高い企業価値、限られた流通株、段階的な売却解禁という構造が、従来の株式市場でどこまで通用するかを試す局面になるとの見方が出ている。