英国の光通信企業Archangel Lightworksは、低軌道衛星とのレーザー通信に対応する超小型移動式光通信地上局「TERRA-M」の試験を完了した。米宇宙開発庁(SDA)のレーザー通信標準に適合した、世界最小級の可搬型光通信地上局だと同社はしている。
TechRadarが現地時間3日に報じたところによると、同社はここ数日の試験を通じて、TERRA-Mの通信性能と標準適合性を検証した。低軌道衛星との高速かつセキュアなデータ伝送環境で、SDAが定める光通信要件を満たすことを確認したという。
TERRA-Mの特徴は、小型化と可搬性にある。本体は高さ1.1メートル、直径0.7メートルで、従来の大型衛星通信地上局と比べて大幅に小さい。固定設置を前提とせず、必要な場所に迅速に搬送して運用できるよう設計した。
同社は、既存の衛星通信インフラが抱えるサイズ、重量、消費電力の課題を抑えつつ、高速な光通信機能を維持することに重点を置いたと説明している。
Archangel LightworksはTERRA-Mを、単なる小型装置ではなく、衛星通信インフラの運用形態を変え得る技術と位置付ける。同社CEOは「衛星と高速かつ安全にデータをやり取りでき、必要な地域へ迅速に展開し、移設できるだけの小型化を実現した」と説明した。
この技術が注目される背景には、既存通信インフラの限界がある。世界のデータ通信は地上および海底の光ケーブル網への依存度が高い一方で、敷設コストが大きく、災害や紛争に脆弱だと指摘されている。
TERRA-Mは、低軌道衛星と直接光通信することで、こうした課題を補完することを狙う。大型地上局を新設せずに衛星ネットワークへ接続できるため、遠隔地や一時的に通信需要が高まる現場にも適するとみられる。
同社は、商用通信に加え、防衛分野での活用余地も大きいとみている。軍事作戦地域や災害対応の現場など、短期間で通信網を構築する必要がある環境での利用を想定する。
英国政府も今回の成果を評価した。英国の宇宙担当相リズ・ロイド氏は「次世代宇宙技術分野において、英国のイノベーションが世界を主導していることを示す事例だ」と述べた。
事業基盤の拡大も進んでいる。Archangel Lightworksの調達額はこれまでに約2000万ドルに達しており、このうち直近のシリーズAで1350万ドルを確保した。投資家にはSantander Alternative Investments、国家安全保障戦略投資ファンド、Blackfinch Ventures、Oxford Capitalなどが名を連ねる。
海外顧客の開拓も進む。オマーンの通信事業者Omantelは2025年、Archangel LightworksとTERRA-Mベースのソリューション導入契約を締結した。同社は装置販売とサービス契約の拡大を進めており、技術の商用化を加速させる方針だ。
業界では、TERRA-Mの本格供給が始まれば、大型の固定式地上局が中心だった衛星通信市場の構図が変わる可能性があるとの見方も出ている。低軌道衛星を活用した光通信の普及が進めば、移動式地上局の需要も拡大する可能性がある。