米ニューヨーク連邦準備銀行は、大卒若年層の失業率上昇について、AIの普及よりも在宅・ハイブリッド勤務の拡大が大きく影響した可能性があるとの分析を示した。在宅勤務の広がりが、大卒者の失業増加分の約64%を説明できるとしている。
TechRadarが3日(現地時間)に報じた。分析では、若年層の採用不振はAIブーム以降に始まった現象ではないと指摘。失業率の上昇はパンデミック後に始まっており、AIを巡る熱狂が本格化する前から続いていたという。
実際、2017年から2022年にかけて、29歳未満の大卒者の失業率は3.1%から3.7%に上昇した。22〜27歳の大卒者でも、2019年の3.6%から2026年時点で5.6%へ上がった。
一方で、こうした傾向は高年齢層では相対的に弱く、若年層の方が採用市場の変化の影響を受けやすいと分析した。
背景として挙げたのが、若手人材の育成における対面環境の重要性だ。新卒層は、頻繁なフィードバックや現場でのコーチング、メンタリングの機会を必要とすることが多く、こうした要素はオフィス勤務の方が機能しやすいという。
このため企業は、在宅・ハイブリッド勤務の下で新卒育成の負担を抱えるより、即戦力となる経験者の採用を優先した可能性があるとした。新入社員には、業務の過程で反復的なフィードバックや現場中心の指導が必要になりやすいためだ。
分析は、企業のオフィス回帰の見方にも一石を投じる。これまで経営陣は生産性向上を主な理由に出社回帰を進めてきたが、実際には新卒人材に対する対面育成ニーズが、より直接的な背景になっている可能性があるという。
新卒採用と育成の仕組みが在宅・ハイブリッド勤務とかみ合わず、採用市場では経験者重視が強まった可能性もある。
もっとも、AIの影響を否定するものではない。専門家は、初級職や事務業務の自動化が中長期的に熟練人材の不足につながる恐れがあると警告している。今後数年でAIの影響が一段と大きくなる可能性もある。
大卒若年層の雇用悪化は、AIによる代替だけでは説明しにくい状況になっている。足元でみられる採用環境の悪化は、在宅・ハイブリッド勤務の拡大、新卒育成コストの上昇、企業の経験者重視、AI自動化への懸念が重なった結果とみられる。
今後は、企業のオフィス回帰がどこまで進むか、また初級職の自動化がどの方向に向かうかが、若年層の雇用市場を占ううえで重要な焦点となりそうだ。