Synologyは6月4日、台北で開催中の「Computex 2026」で、データ主権を軸に据えた事業戦略を示した。データ所有権、セキュリティAI、ディザスタリカバリーを3本柱とし、企業のレガシーデータ管理とオンプレミスAIの重要性を訴えた。
同日、台湾・台北のTaiNEX 2で開かれたキーノートに登壇したSynologyのManaging DirectorのMike Chen氏は、「AIはもはや選択肢ではなく基盤技術だ。課題は、企業内にAIで扱いにくいレガシーデータがあまりにも多いことにある」と述べた。講演テーマは「デジタル主権がプライベートクラウド導入を加速する」だった。
Chen氏はまず、企業がAIネイティブな環境へ移行する流れは不可逆だと指摘した。その例として、韓国が10兆ウォン超の国家AI成長ファンドを組成し、戦略投資を進めている点を挙げた。
一方で、膨大なレガシーデータを適切に管理しないままAI活用を進めれば、データ主権そのものが損なわれかねないと警鐘を鳴らした。
その根拠として、ガートナーの調査も紹介した。従業員の57%がすでに個人向けAIを業務に利用しており、33%は社内の機微データを外部AIに直接入力したと認めたという。Chen氏はこうした状況について、「シャドーITがシャドーAIへと進化した」と表現した。
これに対し、Synologyは3つの対応策を示した。第1の柱はデータ所有権だ。エッジからデータセンターまで、データを自社インフラ上で一貫して管理すべきだとの考え方を打ち出した。
同社は、遠隔地の気象観測所や潜水艦、航空機、宇宙ステーションにまでソリューションを提供しているとして、対応領域の広さをアピールした。
拡張性も強みとして挙げた。小規模なITチームでも、クラウド規模の基盤を単一システムのように運用できるよう、ソフトウェアクラスタ設計に加え、PrometheusやGrafanaなどの監視ツールとの連携を支援するという。
導入事例としては、大韓航空の航空宇宙事業部門を紹介した。Synologyの導入後、業務効率が80%向上したという。
第2の柱はセキュリティAIだ。企業データの大半はPDF、音声、テキストなどの非構造化データで占められており、同社はその約90%に対応するデータインテリジェンス機能をシステムに搭載していると説明した。
セマンティック検索や音声の文字起こし、スキャン文書のOCR処理は、いずれもオンプレミス環境で実行する。文書、スプレッドシート、メール、メッセンジャーを横断して利用できる業務生産性向上のエコシステムもあわせて提供する。
翻訳もリアルタイムで処理し、外部AIツールにデータをコピーする必要をなくせるとしている。
あわせて、セキュリティAIエージェントも披露した。バックアップや復旧状況の点検、セキュリティインシデントの調査、障害対応といった定型業務を自動化する一方、すべての動作は企業が設定した権限モデルの範囲内でのみ実行されるという。
Chen氏は「エージェントは権限を迂回するものではない。権限の範囲内で動作しなければならない」と強調した。
第3の柱は、信頼性の高いディザスタリカバリーだ。Chen氏は、従来の「3-2-1」ルールを拡張し、不変性(Immutability)とエアギャップ(Airgap)、復旧検証まで組み込んだ「新たなゴールデンルール 3-2-1-1-0」を提示した。
このほか、バックアップ時のランサムウェア検知と、復旧時の脅威検知を組み合わせたアクティブプロテクションも紹介した。マルチサイトおよびクロスサイトのディザスタリカバリーに加え、単一の管理画面(Single Pane of Glass)によって、数千規模のシステムを一元管理できると説明した。
講演の最後にChen氏は、「Own your data, own your AI, own your future」と述べ、データとAIを自ら管理することが将来の競争力につながるとの考えを示した。