米投資情報会社Morningstarは、イーロン・マスク氏の宇宙企業SpaceXについて、適正企業価値は約7800億ドル(約11兆7000億円)との分析を示した。市場で見込まれている1兆7500億ドル(約262兆5000億円)規模の上場評価を大きく下回っており、長期投資家にとっては割高との見方だ。
米CNBCが3日(現地時間)に報じたところによると、Morningstarはリポートで、SpaceXの想定上場評価は過熱気味だと指摘した。割引キャッシュフロー(DCF)法に基づき、適正企業価値を約7800億ドルと算定したという。
SpaceXは今月のNasdaq上場を目指しており、IPOで約750億ドル(約11兆2500億円)を調達する案を検討しているとされる。計画通りに進めば企業価値は1兆7500億ドルに達し、史上最大級のIPOの一つとなる見通しだ。
ただ、Morningstarは現在想定される上場価格について、長期投資家にとって魅力的な参入機会とは言い難いとみている。アナリストはリポートで「SpaceXはかなり割高だ」とし、上場後により低い価格で投資できる機会が訪れる可能性があるとした。上場直後を追うより、株価が落ち着く局面を待つ方が、安全余地を見極めやすいとの判断だ。
Morningstarが重視するのは、収益の偏りと採算性だ。SpaceXは直近四半期に42億8000万ドル(約6420億円)の純損失を計上し、2025年通期でも49億4000万ドル(約7410億円)の赤字だった。事業別では、衛星インターネットサービス「Starlink」の直近四半期売上高が32億6000万ドル(約4890億円)と、全体の約69%を占めた。
一方で、宇宙事業部門は6億1900万ドル(約930億円)の営業損失、AI関連事業は約25億ドル(約3750億円)の損失を計上した。実質的な収益源はStarlinkに偏っている構図だ。
とりわけ懸念材料とされるのがAI事業だ。Morningstarは、SpaceXのAI事業であるxAIについて、今後どの程度の収益性を確保できるか不透明感が強いと分析した。アナリストは、xAIの経済的競争優位はまだ実証されておらず、企業価値の押し下げ要因になり得ると指摘した。
SpaceXも上場届出書(S-1)で収益性を巡る不確実性を認めている。「過去に純損失を計上しており、今後も収益性を達成できない可能性がある」としたうえで、AI製品・サービスが本格的に収益化するまで、数年にわたり多額の資本支出が必要になるとの見通しを示した。
もっとも、短期的な株価には強気の見方もある。Morningstarは、当初の流通株式数が限られることに加え、大手投資銀行がIPOに関与している点、足元でAIインフラ関連銘柄への投資需要が強い点を挙げ、上場直後の株価が堅調に推移する可能性は十分にあるとした。上場後15取引日でNasdaq100指数に組み入れられる可能性も、需給面の支援材料とみている。
ただ、こうした期待だけで現在のバリュエーションを正当化することはできない、との立場だ。市場では情報開示の限界も主要リスクとして意識されている。投資プラットフォームAJベルの市場戦略責任者、ダン・コーツワース氏は、SpaceXは未上場企業のため開示される財務情報が限られているうえ、マスク氏が議決権の約85%を保有しており、外部投資家が把握できる情報は多くないと述べた。
同氏は、1兆7500億ドル評価を前提にすると、売上高に対する企業価値(EV/Sales)倍率は約67倍に達すると説明した。これはNVIDIAの直近会計年度ベースの評価のおよそ3倍に当たるという。
業界では、上場そのものの話題性は高いとの見方が多い。ただ、中長期的にはStarlink以外の事業の収益性改善と、AI事業の成長余地を実績で示せるかどうかが、企業価値を支える最大の焦点になりそうだ。
SpaceXを巡る関心は、上場が成功するかどうかよりも、1兆7500億ドルという超大型評価を実績で裏付けられるかに移りつつある。