中国のAIスタートアップDeepSeekが、創業後初となる外部資金調達を大詰めまで進めている。調達額は500億人民元を超え、評価額は約600億ドルに達する見通しだ。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)が3日に報じた。報道によると、今回の資金調達でDeepSeekの評価額は600億ドルにわずかに届かない水準で算定されたという。
これは、4月時点で市場で見込まれていた約100億ドル規模の評価から、約6倍に膨らむ計算になる。
DeepSeekはこれまで外部資本を受け入れず、親会社のHigh-Flyer Quantの支援を受けて事業を運営してきた。ただ、AI開発競争の激化を受け、評価額の明確化と資本増強の必要性が高まったとみられる。
出資には、中国の大手テック企業や機関投資家が参加する見通しだ。Tencentは約100億人民元、NetEaseとJD.comはそれぞれ約30億人民元規模を投じると伝えられている。
世界最大のEV向け電池メーカーであるCATLも、約50億人民元の出資を検討しているとされる。
ベンチャーキャピタルでは、IDG Capital、Monolith、Royal Valley Capital、スシャンテックが候補に挙がっている。創業者兼CEOのリャン・ウェンフォンは、個人資金で約200億人民元を拠出する計画とされる。
調達条件はなお確定していないが、枠組みはかなり具体化しているようだ。中国の企業登録情報サービスQichachaによると、有力投資家と関係する複数の特別目的会社(SPV)が5月中旬以降、相次いで設立された。
なかでも5月19日には、DeepSeekの登記住所と同じ場所に「杭州青策ビジネスコンサルティング」が設立され、リャン・ウェンフォンが実質支配者として登記されたという。
資金調達の背景には、AI分野での競争激化がある。DeepSeekはこれまで外部資本を入れず、汎用人工知能(AGI)の開発に注力してきたが、競合各社との人材争奪戦への対応や、従業員保有株式の価値算定基準を明確にする必要から、評価額の確定が求められていたとされる。
技術面での競争力も投資家の関心を集めている。DeepSeekは昨年公開したオープンソースAIモデル「V3」「R1」を通じ、OpenAIやAnthropicといった米競合よりも低コストで高性能なモデルを開発できることを示したとして評価を集めた。
最近公開した「V4」についても、主要な性能指標でOpenAIとAnthropicの最新の非公開モデルに匹敵するとしている。
価格面でも攻勢を強めている。DeepSeekは先月、V4プロモデルの料金を恒久的に75%引き下げた。キャッシュ済みの入力トークンは100万件当たり0.0036ドル、出力トークンは100万件当たり0.87ドルとし、市場シェアの拡大を狙う。
業界では、Huaweiの次世代AIチップ基盤「Ascend 950PR」スーパーノードの本格供給が始まれば、DeepSeekの運用コストはさらに下がる可能性があるとみている。Huaweiは最近、Ascend 950PRプラットフォームにDeepSeekのV4を完全適用したと発表した。中国AI半導体企業のCambriconやMetaXも関連する最適化に参加しているという。
一方で、サービスの安定性には課題が残る。DeepSeekはV4公開後、断続的な障害が発生しており、利用者の増加に伴ってインフラ負荷も高まっている。
業界では、今回の大型調達が実現すれば、DeepSeekはAIモデル開発に加え、データセンターの拡充、サービス安定化、重要人材の確保に資金を重点的に振り向け、中国AI市場での影響力を一段と高めるとみられている。