携帯電話の契約時に顔認証を義務付ける制度を巡り、科学技術情報通信部は7月から実施する方針を維持した。政府は不正開通の抑止に効果があるとみる一方、販売現場では手続き負担の増加や責任分担の不明確さを懸念する声がなお強い。
◆試験運用を延長、代替認証も検討
科学技術情報通信部は、携帯電話開通時の顔認証制度を7月から施行する。当初は3月23日の正式導入を予定していたが、業界の反発を受け、試験運用期間を約3カ月延長した。
顔認証の導入は、計画公表の段階から議論を呼んできた。昨年12月に試験運用を始めたものの、販売現場からは認証成功率の低さやシステムの不安定さを指摘する声が上がっていた。
非対面契約の比率が高いMVNO業界では、利用者自身が認証手続きを進めなければならず、利便性の低下を懸念する指摘も出ている。
関係機関からも慎重論が示された。国家人権委員会は3月13日、携帯電話開通時の顔認証義務化について慎重な再検討を求める勧告を科学技術情報通信部に出した。生体情報は漏えい時の影響が大きく、明確な法的根拠と本人の選択権確保が必要だとした。
これを受け、同部は正式導入時期を後ろ倒しした。人権委の勧告から1週間後の3月20日、試験運用期間を6月30日まで延長すると決定した。通信大手3社やMVNO協会、移動通信流通協会などの意見を総合的に踏まえた措置だと説明している。
延長した試験運用期間中、同部は代替認証手段の検討も進めている。行政安全部が提供するモバイル身分証アプリの暗証番号認証に加え、ビデオ通話による確認、指紋・虹彩などの生体認証、口座認証などを試験し、正式施行に備える。
ただ、個人情報保護委員会が改善勧告を出したことで、再び延期論が浮上した。個人情報保護委員会は先月27日の全体会議で、科学技術情報通信部に対する改善勧告を議決した。
同委員会は、厳格な保護が求められる生体情報を本人確認手段として導入する以上、収集・利用・保管・廃棄を含む一連の処理に対する保護措置が十分ではないと判断した。現行法令では、携帯電話開通の過程で顔情報を本人確認に活用する法的根拠が明確でない点も論点として挙げた。
◆政府は7月実施を再確認、現場は負担増を警戒
それでも科学技術情報通信部は予定通り実施する構えを崩していない。ペ・ギョンフン科学技術情報通信部長官は先月29日、政府発足1周年の記者懇談会で、「もともと6月30日まで試験運用する予定だった」と述べ、追加延期の見方を否定した。
チェ・ウヒョク情報保護ネットワーク室長も、「十分に代替可能な複数の手段について事業者と綿密に協議している」と述べ、7月実施方針を改めて示した。
同部は、顔認証制度が携帯電話の不正開通の抑止につながるとみている。他人名義で携帯電話を契約し、ボイスフィッシングやスミッシング、いわゆる「名義貸し端末」の流通に悪用する事例が続いており、契約段階で本人確認の水準を引き上げる必要があるという判断だ。
非対面契約や流通網を通じた名義盗用が続くなか、従来の身分証確認だけでは限界があるとの指摘も導入の背景にある。科学技術情報通信部は安全性への懸念が広がると、別途ブリーフィングも開いて説明に当たった。
顔認証では、身分証の写真とリアルタイムの顔映像を照合し、一致の有無のみを確認する。認証に用いた生体情報は別途保存しないとしている。
一方で、制度導入に伴う負担が現場に集中しかねないとの懸念は根強い。販売店は利用者に追加の認証手続きを案内し、エラーや認証失敗にも対応しなければならない。認証で問題が発生した場合や、利用者が生体情報の提供をためらった場合には、開通の遅れや苦情対応を販売現場が引き受ける可能性がある。
ヨム・ギュホ全国移動通信流通協会会長は、「名義貸し端末を減らすため、本人確認を強化する方向性には共感する」としたうえで、「認証エラーや利用者との摩擦など、現場の懸念は大きい」と述べた。さらに「何より利用者の不便につながりかねない点は補完が必要だ」と話した。
通信業界の関係者からも、開通時間の長期化による利用者の不満を懸念する声が出ている。別の関係者は、「代替認証手段が用意されても、実際に円滑に機能するかは見極める必要がある」と指摘した。
また、「認証手続きに不慣れな利用者は、手順の理解に時間がかかる可能性がある」として、「政府は制度施行前に現場の実情を綿密に点検すべきだ」と求めた。
責任分担の不明確さも課題として残る。顔認証の失敗や代替認証の過程で開通が遅れた場合、利用者の不満は最前線の販売チャネルに向かう可能性が高い。認証過程で問題が発生した際に、通信会社、販売店、認証システムの運営主体のいずれが責任を負うのかも明確ではない。
通信業界では、制度施行前により具体的な運用基準を示すべきだとの声が強まっている。別の業界関係者は、「現場負担が過度に膨らまないよう、運用基準を詳細に定める必要がある」とし、「エラー発生時の対応手順と責任範囲が明確でなければ、施行初期の混乱は避けられない」と述べた。