写真左から、Samsung Electronicsのソ・ジョンア副社長、Snowflakeのクリスティアン・クライナーマン上級副社長

【サンフランシスコ=ファン・チギュ】Samsung ElectronicsでMX事業部デジタルコマースチームを率いるソ・ジョンア副社長は6月2日(現地時間)、米サンフランシスコで開かれた「Snowflake Summit 2026」で講演し、AX(AI Transformation)の本質は既存業務へのAI導入ではなく、業務プロセスそのものの再設計にあると強調した。あわせて、データを活用できる人材の裾野を広げることが重要だと説明した。

ソ副社長は、Snowflakeのクリスティアン・クライナーマン上級副社長との対談で、Samsung Electronicsが進めるAX戦略と実運用の事例を紹介した。

同氏によると、同社はAXを全社で推進することで、データ分析の進め方や意思決定のスピードを大きく変えてきた。その一例として、Galaxy S26などフラッグシップ機の発売時における業務プロセスの変化を挙げた。

Samsung Electronicsはスマートフォンの新製品投入時、世界市場シェア、顧客セグメント別データ、時間帯ごとの販売数量と価格、顧客レビューなど、大量のデータを継続的に追跡しているという。

従来は、特定地域でコンバージョン率が落ちた場合でも、分析チームが原因を洗い出して関係部門に共有するまでに時間を要し、適切な対応のタイミングを逃すことがあった。こうした課題に対応するため、同社は「Shoppers Inside Action Agent」を構築した。

ソ副社長は「エージェントは単にデータを取得するだけではない。複数のシグナルを統合し、意味のある答えを返す」と説明した。例えば「Galaxy S26の発売成果をAmazonで旧モデルと比較してほしい」と依頼すると、エージェントが段階的に分析計画を立て、関連シグナルを照合しながら結果を提示する。従来は数時間かかっていた作業が、現在では数秒で完了するようになったという。

AI導入によって働き方も大きく変わった。以前は製品実績に関する単純な問いでも、マーケティング、EC、サプライチェーン、財務の各部門がスプレッドシートをメールでやり取りし、ダッシュボードの更新を待ちながら会議を重ねる必要があった。合意形成が済んだ時点では、すでに対応が遅れているケースも少なくなかったという。

これに対し現在は、AIエージェントが業務プロセスの中核で各種シグナルを継続的に監視し、必要な対応を提案したうえで、関係チームに自動連携する仕組みを整えた。特定地域で需要急増の兆候を捉えた場合も、数週間ではなく数時間単位で広告予算の見直しや在庫の再配置を実行できるとしている。

ソ副社長は、AXの核心について「より多くの社員がデータにアクセスし、直接活用できるようにすることだ」と述べた。データチームを介さず、ビジネスリーダーが自ら分析できる環境への転換が重要だという。

同氏は「現在、世界各地の営業部門、パートナー、役員など、Samsung ElectronicsのさまざまなメンバーがShoppers Inside Action Agentを利用している」と説明した。利用者はデータサイエンティストではなく、地域ごとの目標や販促戦略、製品ロードマップに責任を持つビジネスリーダーが中心で、これまで分析結果を待つ立場だった層が、自ら判断に必要な分析を行えるようになったとした。

今後については、運用効率の改善にとどまらず、新たな事業機会の発掘へとAI活用を高度化する方針を示した。ソ副社長は「市場が動く前に方向性を予測できる、AIベースの統合ビューの構築が目標だ」と述べ、「エージェントを季節プロモーションの最適化にとどめず、新たな販促戦略や新規顧客セグメント、新しい顧客体験まで提案できる水準へ発展させたい」と語った。

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