Microsoftは6月3日、開発者会議「Microsoft Build 2026」で、AIエージェントとアプリケーションの開発・運用を支えるプラットフォームの刷新を発表した。新たに「Microsoft IQ」「Microsoft Scout」「MAI」モデル群、「Agent 365 for Local Agents」などを投入し、ローカルPCからクラウドまでをまたぐマルチモデル基盤を強化する。
サティア・ナデラCEO兼会長は、「Build 2026の中心にあるのは特定の技術ではなく、プラットフォーム上で価値を生み出し、それを拡大できるよう支援することだ」と説明した。あわせて、エッジからクラウドまでをつなぐAIスタックを通じ、開発者がより大きな価値を生み出せる基盤を広げていると述べた。
同社は今回、開発者が選択肢と制御性を確保したまま構築できる環境として、ローカルPCからクラウドまでをカバーするマルチモデルのエコシステムを前面に打ち出した。
発表の柱は大きく3つある。第1に、「Microsoft IQ」に支えられた「Microsoft Agent Platform」を基盤とするエージェントの構築・配備・最適化。第2に、シリコン、OS、開発ツール、クラウドまでを含むフルスタックの柔軟性とローカル実行の選択肢。第3に、科学・コンピューティング領域まで広がるエージェントシステムによって、研究者や科学者の成果創出を後押しすることだ。
まず、同社は新たなコンテキスト基盤「Microsoft IQ」を正式公開した。GitHub Copilot、Microsoft Foundry、Copilot Studio全体で提供し、エージェントが企業内の知識と外部知識をつなげられるようにする。
Microsoft IQは、「Work IQ」「Fabric IQ」「Foundry IQ」の3つの主要レイヤーで構成される。
Work IQは、Microsoft 365、社内システム、外部ソース全体にまたがる業務フローや接続関係を把握する業務インテリジェンス層と位置付ける。Work IQ APIは今月16日に提供を開始する。Fabric IQは構造化されたビジネスデータ共有の基盤を担い、Foundry IQは企業内知識とライブWeb全体を対象にした検索計画を支援する。Web IQは、モデルに依存しないMCPネイティブのAI向けWeb検索スタックとして、エージェントが実際のWeb情報をより迅速に活用できるようにする。
業務向けのパーソナルエージェント「Microsoft Scout」も公開した。ScoutはOpenClawとWork IQを基盤に構築され、利用者の業務パターンを踏まえて、TeamsやOutlookなどのツールを活用し、会議準備やスケジュール競合への対応、反復業務の処理を先回りして支援する。
独自開発のAIモデル群「MAI」も公表した。このうち「MAI-Thinking-1」は、Microsoft初の推論モデルと位置付ける。蒸留(distillation)工程を経ず、エンタープライズ向けに精製した商用ライセンスデータを基に、ゼロから学習したという。
アクティブパラメータ数は350億で、コンテキストウィンドウは256K。低いトークンコストで高効率・高性能を狙った設計とし、複雑な多段階指示の実行、長文コンテキストの推論、コード生成に強みがあるとしている。現在はFoundryで非公開プレビューとして提供している。
セキュリティとガバナンス分野では、「Agent 365 for Local Agents」を公開した。Microsoft Entra、Microsoft Defender、Microsoft Purviewを単一の制御プレーンで扱えるようにし、ホスティング環境や基盤フレームワークの違いにかかわらず、エージェント全体を可視化し、制御・保護できるようにする。
あわせて、フレームワークを問わずAIエージェントに適用できる、オープンなエンドツーエンドの信頼スタックも示した。これには、ポリシーベースの安全性評価を担うオープンソースプロジェクト「ASSERT(Adaptive Spec-driven Scoring for Evaluation and Regression Testing)」と、エージェント動作に対してどこにどのような統制を適用するかを標準化する「Agent Control Specification」が含まれる。
さらに、新たなマルチモデルのエージェント型セキュリティシステム「MDASH」(コードネーム)も披露した。100を超えるエージェントを活用し、データフローやビジネスロジック、エクスプロイトチェーンを推論した上で、コンテキストに基づく修正案をDefenderポータル経由で提示するという。