金融機関の財務部門でAIの導入が進んでいる。ただ、CFOの間では、統制を伴わないまま自動化を拡大することへの警戒感が強い。効率化の効果は認めつつも、ガバナンスやリスク管理の体制が整わなければ、本格導入は難しいとの見方が広がっている。
TechRadarが6月1日(現地時間)に報じたところによると、英国とアイルランドのCFOや財務ディレクターらは、AIが財務業務の効率化や意思決定支援に役立つ点ではおおむね一致した。一方で、コンプライアンス、監査、データガバナンスの整備が導入ペースに追いついていないことを、最大の懸念材料として挙げた。
こうした認識は、Nexas.AIの最新調査でも裏付けられた。大手金融機関の43%は、AIリスクフレームワークを整備していなかった。組織全体でAI活用が進む一方、財務部門がそれを監督・検証する仕組みは十分に整っていない実態が浮かんだ。
この空白は、規制リスクや運用リスクに直結しかねない。財務業務は会計基準、内部統制、外部監査と密接に関わるため、AIの出力を説明・追跡できなければ、レピュテーションの毀損につながる可能性もある。
足元では、財務分野におけるAI活用は比較的リスクの低い業務に集中している。主な適用先としては、月次決算、事務処理、照合作業、文書データの抽出、取引データのコード付与、財務プロセス間の連携自動化などが挙がった。反復業務はAIに任せつつ、重要な財務判断や最終責任は人が担う構図だ。
CFOが重視する導入条件は明確だ。透明性、監査可能性、データガバナンス、リスク管理、規制順守である。新たなAIツールがこうした基準を満たさなければ、会計基準への不適合や業務上のミスを招きかねない。規制対応が厳しい金融業界では、AIシステムにも説明可能性と説明責任が求められている。
このため一部の金融機関では、AIツールをやみくもに増やすのではなく、規制環境に適合した財務システムの選別へと軸足を移している。結果を追跡・検証できないAIツールへの依存を避けるべきだとの見方も強い。AI導入の焦点が、スピード重視から管理可能性重視へ移りつつある格好だ。
一方、AIが財務人材を全面的に代替するとの見方には距離がある。低リスクの反復業務の自動化は広がるとしても、財務人材の役割は、解釈と判断、監督、戦略立案へと比重を移していく可能性が高いという。
金融業界におけるAI活用は今後も拡大が見込まれる。ただ、現場に広く定着させるには効率化だけでは不十分だ。CFOが求める統制、監査可能性、規制順守の基準を満たしたシステムだけが、財務部門の中核業務を担うことになりそうだ。