写真=UnitreeのYouTubeより、ヒューマノイドロボット「G1」がスケートする様子

中国のヒューマノイドロボットメーカーUnitreeが、上海証券取引所の科創板(STAR市場)への新規株式公開(IPO)に向けて前進した。上場委員会の審議を通過し、今後は登録・発行手続きに進む。公募規模は4040万株超、調達額は42億人民元(約693億円)を見込む。

香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)が6月1日付で報じた。Unitreeも同日、STAR市場の上場委員会審議を通過したことを明らかにした。

杭州に本社を置くUnitreeは、3月20日にSTAR市場への上場を申請した。その後、当局による2回の照会と現場点検を経て、今回の審議通過に至った。公募株数は4040万株で、発行後株式数の10%以上に相当する見通しだ。

今回の動きは、中国ヒューマノイドロボット業界でIPO機運が強まっている流れと重なる。香港上場企業のDobotは深セン創業板での重複上場を進めており、Leju RoboticsとDeep Roboticsもそれぞれ深セン、上海での上場手続きを進めている。Morgan Stanleyで中国インダストリアルズ調査責任者を務めるジョン・シンは、「ヒューマノイド関連企業のIPOは、ロボット株への市場の関心を一段と高める」との見方を示した。

業績面でも、Unitreeは業界内で存在感を高めている。2025年の売上高は17億人民元(約281億円)で、香港上場のUBTECHの20億人民元には及ばなかったものの、純利益は5億9080万人民元(約97億円)と競合各社の中で最も高かった。

一方で、足元の収益性には変調もみられる。5月に更新した目論見書によると、2026年1〜3月期の売上高は前年同期比68%増の4億2280万人民元(約70億円)だったが、一過性要因を除く調整後純利益は52%超減の4030万人民元(約6.6億円)に落ち込んだ。

同社は、収益性悪化の要因として研究開発費と販売費の増加を挙げた。ヒューマノイドロボット市場の過熱感が一服したことも収益を圧迫したとしている。これを踏まえ、調達資金の半分をロボット向けAI基盤モデルの開発に投じる計画だ。

目論見書では、ワールド・モデル・アクション(WMA)とビジョン・ランゲージ・アクション(VLA)に基づくモデル開発を重点分野として示した。WMAは、ロボットが行動する前に物理環境の反応を予測することを支援する。一方のVLAは、視覚情報や音声・文字による指示を実際の行動に結び付ける役割を担う。

Unitreeが公募資金の大きな割合を生産能力の拡大ではなくAI基盤モデルの高度化に充てる点は、中国ヒューマノイド企業の資金使途の方向性を映している。ジョン・シンも、中国のヒューマノイドロボット企業がIPOで調達する資金は総じて研究開発、とりわけロボット基盤モデルに集中し、生産能力の増強に振り向ける比率は相対的に低いとの見方を示した。

競争環境も厳しさを増している。Unitreeは目論見書で、Teslaの「Optimus」プロジェクトに加え、中国の自動車メーカーや消費者向け電子機器メーカーの参入を競争リスクとして挙げた。ジョン・シンは、現時点の業界の優先課題は商用化と出荷拡大にあるとしたうえで、「垂直統合型企業の生産能力増強と量産は部品需要を下支えする」と述べ、中国のサプライチェーン企業には追い風になると分析した。

市場では、2026年をヒューマノイドロボット産業の分岐点とみる見方が出ている。UBSは、2026年の世界のヒューマノイドロボット出荷台数が3万台に達すると予測した。ただ、産業現場での導入はなお実証段階にあり、本格的な商用化への転換点とみなすのは時期尚早だとの声もある。

UBSの中国インダストリアルズ担当アナリスト、フィリス・ワンは「AI基盤モデルとデータ不足が依然として主要なボトルネックだ」と指摘し、「本格的な量産には、この両面での突破が必要になる」と述べた。そうした中でUnitreeの上場手続きが前進したことは、中国ヒューマノイド企業が技術開発と生産拡大に向けた資金確保競争を本格化させていることを示している。

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