米上院は今週、デジタル資産市場構造法案「CLARITY法案」の審議を再開する見通しだ。最大の争点は規制の細部ではなく、選挙で選ばれた公職者による暗号資産事業との利益相反をどう防ぐかという倫理条項にある。あわせて、銀行業界が反対する条項の扱いも法案審議の行方を左右しそうだ。
Cointelegraphが1日(現地時間)に報じたところによると、上院はメモリアルデーの休会明けに合わせ、CLARITY法案の審議と条文調整を再開する。法案は暗号資産市場の規制枠組みを整備し、連邦の商品規制当局の監督権限を広げる内容を柱とする。暗号資産業界が長年求めてきた市場構造法案の中核と位置付けられている。
同法案は昨年7月に下院を通過した。直近では、上院農業委員会と上院銀行委員会でも関連法案の検討が進んでおり、上院は両委員会の案を一本化する作業を進めている。業界では、早ければ8月に本会議採決に進む可能性も指摘されている。
もっとも、成立にはなおハードルがある。上院で可決するには少なくとも60票が必要で、共和党だけでなく民主党の一部議員の賛成も欠かせないためだ。
民主党は、公職者による暗号資産事業への関与に伴う利益相反を防ぐ条項が盛り込まれなければ、法案支持は難しいとの立場を示している。カーステン・ギリブランド上院議員は先月、「倫理条項のない法案に賛成する議員はいないだろう」と述べた。
ドナルド・トランプ大統領と暗号資産業界の関係を巡る論争も、民主党の姿勢を強める要因になっている。エリザベス・ウォーレン上院議員らは、トランプ氏に関連するミームコイン事業や、家族が関与した暗号資産プロジェクト「World Liberty Financial」を挙げ、利益相反の可能性を問題視している。
これに対し共和党の一部議員は、この論点は個別法案ではなく上院全体で議論すべき問題だとの認識を示している。倫理条項を巡る対立は、単なる修正協議の範囲を超え、法案成立の可否を左右する主要争点に浮上している。
一方、暗号資産業界は法案成立の必要性を訴える。Coinbaseの最高政策責任者(CPO)であるファリヤル・シルザド氏は最近、Fox Businessのインタビューで、CLARITY法案を「ドッド・フランク法以降で最も重要な金融規制法案」と位置付けた。
業界では、同法案が成立すればデジタル資産を巡る規制の不確実性が大きく和らぐとの見方が強い。米市場で事業者の法的位置付けが明確になり、機関投資家マネーの流入にも追い風になるとの期待が出ている。
ただ、銀行業界は一部条項に強く反発している。JPMorganのジェイミー・ダイモンCEOは先月30日、現行の法案文言では銀行業界として受け入れがたいとの認識を示した。
問題視しているのは、暗号資産企業が顧客の預かり資産やステーブルコイン残高に利払いできる余地がある点だ。市場では、ステーブルコインやトークン化金融商品の広がりが、伝統的な金融機関とデジタル資産業界の競争を一段と強めているとの見方が出ている。
市場も立法の行方を注視している。予測市場Polymarketでは、CLARITY法案の年内成立を巡る賭け金総額が110万ドルを超え、成立確率は約55%と織り込まれている。
このほか、ステーブルコイン規制法案「GENIUS法案」に関する手続きも進んでいる。米財務省、連邦預金保険公社(FDIC)、金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)、外国資産管理局(OFAC)は2日、関連するパブリックコメントの募集を締め切る予定だ。
銀行業界の一部は募集期間の延長を求めたが、予定通り締め切られればGENIUS法案の施行準備は次の段階に進む。法案は、制定から18カ月後、または規制当局が最終規則を公表してから120日後のいずれか遅い時点で発効すると定めている。
今週の上院審議では、CLARITY法案の統合案をどこまで早くまとめられるかよりも、民主党が求める倫理条項と、銀行業界が反対する条項をどこまで調整できるかが焦点となる。仮に統合法案が本会議に上程されても、超党派の支持を確保できなければ、下院への差し戻しや大統領署名までの手続きが再び遅れる可能性がある。