NVIDIAが、AIエージェント対応を視野に入れたPC向け新チップ「RTX Spark」を投入する。MicrosoftやPCメーカーと連携し、AI機能を軸にPC市場の需要喚起を狙う構えだ。Arm系AI PC市場では、一定の存在感を持つAppleとの競争も注目を集めそうだ。
スマートフォンの普及以降、PCは消費者向け市場で相対的に存在感を落としてきた。一方で足元では、MicrosoftやAppleもAIを軸にPCの刷新を急いでいる。AI機能が「どのPCでもよい」という見方を変え、買い替え需要を生み出せるかが焦点となる。
AIをてこにPC市場を活性化させようとする動きはこれまでにもあった。ただ、期待されたほどのインパクトは示せていない。MicrosoftとQualcommは2年前にCopilot Plus PCを投入し、文書検索や写真編集の利便性を打ち出したが、市場を大きく動かすには至らなかった。
こうした中、NVIDIAはRTX Spark搭載PCで、AIエージェントが人の操作のようにマウスやキーボードを自律的に扱える環境づくりを進めている。MicrosoftやPCメーカーと協業し、AIエージェントの実用化をPC上で後押しする考えだ。
NVIDIAは、AIエージェントの普及が進みつつある現在は、2年前とは市場環境が異なるとみている。
米New York Timesによると、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、台湾・台北で開かれるIT展示会「COMPUTEX」で、将来的にはAIスーパーコンピュータが家庭に普及する可能性があると語った。ホームシアターや大型テレビ、芝刈り機、食器洗い機が特別な存在ではなくなったように、AIスーパーコンピュータも一般的な家電になり得るとの見方を示したという。
フアン氏はさらに、AIスーパーコンピュータがユーザー向けの各種AIエージェントやAIアシスタントを動かし、常時さまざまな作業を処理する基盤になるとも述べた。
RTX Sparkは、AIシステム開発やビデオゲーム、コンピュータグラフィックス制作などの用途を想定する。搭載ノートPCは薄型設計で、最薄14ミリメートル、重さは3ポンド(約1.36キログラム)未満になるとしている。
NVIDIAはまず、Dell Technologies、Lenovo、Microsoft、HP、ASUS、MSIの6社と連携し、RTX Spark搭載ノートPCの展開拡大を目指す。バッテリー駆動時間や性能の詳細は今秋に公表する予定だ。
RTX Sparkの発表を受け、ノートPC市場ではAppleとの競争も焦点になっている。New York Timesは、AppleがAI PC市場で一定の存在感を確保していると報じた。
Mac ProはAI開発者の間で人気が高く、大容量メモリを搭載したMac miniも、AIエージェントを動かす用途で使われ、販売が好調だという。
Creative Strategiesのテックアナリスト、マックス・ウェインバッハ氏は「現在のAI PC市場は事実上Appleが握っている。NVIDIAはそれに対抗できるWindowsノートPCのエコシステムを構築したいはずだ」と指摘した。
Appleも、端末上でAIを処理するオンデバイスAIの強化に向けた投資を増やしているもようだ。昨年10月には、全GPUコアにニューラルアクセラレータを内蔵したM5チップを公開した。
Appleは自社測定として、M5が300億パラメータ規模のモデルを3秒以内に動作させられるとしている。オンデバイスAIの強化は、高効率なチップ開発にとどまらず、端末で動くAIモデルや関連ソフトウェアの整備にも広がっている。
The Informationによると、AppleはGoogleとの契約の一環として、自社端末上で動作可能な小型モデルの学習にGeminiモデルを利用できるようになったという。
また同社は、端末向けAIモデルの小型化に役立つ可能性のある小規模企業の買収も検討している。The Informationは関係者の話として、候補の一つに端末上のAIに特化したスタートアップ、LiquidAIが含まれると報じた。
Apple、NVIDIA、Qualcommはいずれも、x86ベースのIntelやAMDとは異なり、モバイル向けチップで広く採用されるArmアーキテクチャをベースにしたPC用チップを展開している。
Windows Centralによると、Qualcommのコンピューティング部門上級副社長ケダル・コンダップ氏は、NVIDIAによるRTX Spark発表直後に記者団に対し、「ファミリーへようこそ。x86の外でエコシステムが成長していることを示す好例だ」と述べた。
その上で同氏は、Qualcommがここ数年、プリンターやソフトウェアアプリ、周辺機器との互換性確保に加え、2500本超のゲーム対応など、Arm PCエコシステムの構築を主導してきたと強調した。
ArmベースのPCは、バッテリー駆動時間などでx86陣営より優位に立てる可能性がある一方、既存のx86向けアプリケーションとの互換性確保が課題となる。NVIDIAがこの互換性の問題を解消したかどうかは、現時点では確認されていない。
現行のSnapdragon搭載Arm PCでは、MicrosoftのPrismエミュレーションレイヤーを通じてx86アプリを動作させている。ただ、Windows Centralによると、一部の旧式アプリや最新ゲームでは制約が残るという。