Appleが開発を進める初のスマートグラスは、Metaとの競争にとどまらず、アイウェア市場全体を視野に入れた製品になる可能性がある。価格帯は200〜500ドルとされ、ラグジュアリー路線ではなく大衆向けを意識した戦略が浮かび上がっている。
米Gizmodoは6月1日(現地時間)、Appleがスマートウォッチ市場参入時と同様に、スマートグラスでも新たな需要の掘り起こしを狙っていると報じた。
注目されるのは、Appleが想定する競争相手の範囲だ。報道によると、同社はスマートグラス市場の先行企業であるMetaだけでなく、Oakley、Ray-Ban、Warby Parkerといった既存のアイウェアブランドも競合として見据えている。テック機器としてのシェア争いにとどまらず、日常使いの眼鏡の選択そのものを変える狙いがあるとみられる。
Bloombergのマーク・ガーマン氏は、Appleは強力なブランド力や工業デザイン、iPhoneとの連携機能を武器に、新たに眼鏡を購入する消費者がApple製品を選ぶとみているようだと伝えた。加えて、20億台超のアクティブデバイスを抱えるエコシステムやグローバルな小売網、周囲の世界とのやり取りを支援するAI機能も販売を後押しする要素として挙げられている。
価格設定もこうした戦略を反映している。現在取り沙汰されている価格帯は200〜500ドル。最終的にこのレンジに収まるかはなお不透明だが、高価格帯のラグジュアリー製品ではなく、一般消費者に近いポジションを志向していることがうかがえる。
この構図は、Apple Watchの立ち上げ時とも重なる。Appleは2014年9月にApple Watchを投入した際、PebbleやMotorolaといったスマートウォッチメーカーだけでなく、Swatch、Fossil、Seikoなど既存の時計メーカーも競合として捉えていた。今回もスマートグラスを単なる電子機器ではなく、アイウェア産業全体の中で位置付けようとしている格好だ。
市場規模も、その背景にある。Apple Watchの年間売上高は約170億ドルと推定される一方、アイウェア市場にはそれを上回る市場機会があるとの見方が出ている。市場調査会社Mordor Intelligenceは、時計市場の規模を約1320億ドル、アイウェア市場を1800億〜2000億ドルと推計している。
Appleは今回、高級市場を前面に出していないようだ。過去には最安でも128万円に達する「Apple Watch Edition」で高級腕時計市場への参入を試みたが、大きな成功にはつながらず、公式修理サービスも2023年10月に終了した。こうした経緯を踏まえ、スマートグラスではより大衆向けの製品に軸足を置く可能性が指摘されている。
投入時期は2027年後半が有力視されている。Appleがこの戦略を実行すれば、スマートグラスはMetaとのデバイス競争を超え、従来は既存の眼鏡メーカーが主導してきた消費財市場と真正面から競合する製品になる可能性がある。焦点は、iPhone連携やエコシステム、AI機能を武器に、眼鏡を単なる電子機器ではなく日用品として再定義できるかどうかにある。