米政府は、中国系企業の海外法人向けを含む先端AIチップ輸出の管理を強化した。中国に最終親会社を持つ企業への出荷を個別許可制とするもので、NvidiaやAMDの高性能製品が対象となる可能性がある。市場では、両社株の下押し要因になるとの見方が出ている。
5月31日付のBeInCrypto報道によると、米商務省産業安全保障局(BIS)は週末に新たな指針を公表し、最終親会社が中国にある購入者に対して先端AIチップを輸出する場合、個別の許可取得を求める方針を示した。
今回の措置は全面的な禁輸ではなく、既存の輸出規制の運用上の空白を埋める色合いが強い。トランプ政権は昨年5月、バイデン政権期に整備されたAI拡散ルールの執行を停止しており、その後およそ1年にわたり、中国と関係する海外の購入者に先端チップが大量に流入したとされる。業界では、その規模が数十万個に達する可能性も指摘されている。
BISが特に問題視しているのは最先端のAIプロセッサーだ。NvidiaのRubinとBlackwell、AMDのMI350xアクセラレーターが代表例として挙げられた。狙いは、NvidiaとAMDの最上位AIチップが中国国外の中国系子会社に渡るのを防ぐことにある。輸出企業は今後、仕向け地の国だけでなく、購入者を最終的に支配する主体がどこにあるかまで確認する必要がある。
もっとも、業績への影響は当面限定的にとどまるとの見方もある。今回の指針は新たな包括禁止というより、執行基準の明確化に近いためだ。既存の許可の下で供給されてきた下位チップの販売は、従来の条件で継続できる見通しで、すでに出荷済みの製品も顧客の手元に残る。
Nvidiaは2027会計年度第1四半期に、中国向けデータセンター用Hopperの出荷がゼロだったと公表している。前年同期の46億ドル(約6900億円)から大きく落ち込んだが、データセンター事業全体の売上高はBlackwell 300の需要に支えられ、752億ドル(約11兆2800億円)と過去最高を記録した。
株価の反応は、規制の厳しさそのものよりも投資家心理に左右される可能性がある。これに先立ち、世界のAIチップ輸出に政府承認を求める草案が浮上した際には、Nvidia株が1.8%、AMD株が2.2%下落した。今回は対象がより限定的なため、反応も同程度か、より小幅にとどまるとの見方がある。
市場ではこの1年、どのような迂回輸出ルートが使われてきたのかにも改めて注目が集まっている。業界関係者の間では、シンガポールとマレーシアが中継拠点として疑われている。米連邦検察は過去に、同様の迂回パターンに絡む25億ドル(約3750億円)規模のGPU密輸組織の運営者を起訴したことがある。
今回の措置により、流通業者やクラウドの再販業者の負担も増しそうだ。輸出企業には、すべての購入者について最終親会社の確認が求められ、顧客確認手続きも一段と厳格になる。2024年以降は、中国向け規制の枠組みに加え、個別企業への制裁や中東向け輸出制限も重なっており、サプライチェーン管理の難度は高まっている。
暗号資産市場への波及を指摘する声もある。AI関連の暗号資産トークンは、米半導体株の値動きと連動するケースが少なくない。半導体セクターに対する投資家心理の悪化が現物市場に波及すれば、関連トークンにも軟調な動きが広がる可能性がある。
当面の焦点は、今回の規制強化が主力製品の売上高にどの程度影響するかだ。供給が米国や同盟国の顧客に再配分される可能性も取り沙汰されている。次の四半期決算は、規制強化の影響を測る最初の重要な判断材料となりそうだ。