AI市場の焦点は性能競争からコスト構造の見直しへ(写真=Shutterstock)

生成AIが企業の主要な生産性向上ツールとして定着する一方、AI関連コストの急増が新たな経営課題として浮上している。企業によっては年間のAI予算を数カ月で使い切るケースもあり、採用を優先するのか、AI投資を拡大するのかという判断を迫られている。

CNBCが5月29日(現地時間)に報じたところによると、米主要企業の関心はAI導入の拡大そのものから、コスト管理と効率的なモデル運用へと移りつつある。AIの活用は広がっているものの、投資対効果をどう確保するかが課題になっている。

企業向けAIプラットフォームを手掛けるGleanのCEO、アービンド・ジェイン氏は、顧客企業が直面する最大の問題の一つとしてAIコストの膨張を挙げた。「多くの企業で年間AI予算が1〜2カ月で枯渇している。AI活用は増えているが、価格に対する感度も想定以上の速さで高まっている」と話した。

技術革新や競争の激化によってAIコストは急速に低下するとの見方もあったが、実際にはそうなっていない。最新の大規模言語モデル(LLM)は前世代より高性能な半面、価格はむしろ上昇しているという。

ジェイン氏は「最先端のAIモデルでは、従来モデルに比べてトークン当たりのコストが約2倍になるケースが多い。現在のコスト構造は長期的に持続しにくい」と指摘した。

とりわけ注目されるのは、AIコストが採用予算と競合し始めている点だ。これまで技術投資は運用コストの一部とみなされることが多かったが、足元では人員を増やすのか、AIに予算を厚く配分するのかという判断が現実の経営課題になっている。

ジェイン氏は「最近はAI予算の増加分が、新規採用の拡大に回るはずだった原資を置き換えるケースが増えている。生産性向上を見込んでAI投資を積み増す一方、追加採用の余地は狭まっている」と説明した。

AIソフトウェア開発プラットフォームを提供するFactory AIも、同様の変化を認識している。CEOのマタン・グリーンバーグ氏は「経営陣は今、従業員数を最適化するのか、従業員1人当たりのAIコストを最適化するのかで悩んでいる。AIはもはや象徴的な技術投資ではなく、本格的な予算配分の問題になった」と語った。

企業のAI活用戦略も急速に変化している。グリーンバーグ氏によると、当初は取締役会が経営陣にAI導入を求める段階にあり、その後はコストをあまり気にせず、できるだけ多くのAIを導入する局面が続いたという。

ただ、現在は第3段階に入ったとの見方を示す。すべての業務に最も高価な最新モデルが必要なのか、それとも一部業務では低コストのモデルで代替できるのかを見極める、コスト最適化の局面に入ったという。

課題は、AIが一定の成果を上げている一方で、コスト増加のペースに見合うだけの収益性をまだ示せていないことにある。ジェイン氏は「AIは強力なツールだが、依然として非効率な面がある。企業が得る価値が支出の増加に追いついていないケースが多い」と述べた。

同氏によると、企業向けAI利用の約95%はいまなお最も高価な最上位モデルに集中している。ただ、相当数の業務は、多少性能が劣っても、はるかに安価なモデルで十分に処理できるという。

業務の分類とモデルの割り当てを適切に行うだけでも、AIコストは大幅に圧縮できる可能性がある。ジェイン氏は、業務の難易度に応じてモデルを使い分ければ、最大で10倍規模のコスト削減も可能だと主張した。

これに伴い、企業向けAI市場の競争軸も変わり始めている。これまでは、より高性能なモデルを投入できるかが焦点だったが、今後はどのモデルをどの業務に割り当て、費用対効果を高められるかが重要な競争要因になる可能性がある。

業界では、AI市場が性能競争から経済性の競争へ移行しつつあるとの見方が出ている。企業が最上位モデルの性能向上だけでなく投資対効果を厳しく見極め始めたことで、今後のAI産業の成長ペースや企業価値の評価にも影響を与える可能性がある。

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