Ethereumエコシステム内部で、ETHの対BTCパフォーマンス低下を巡り、Ethereum Foundationの実行力不足を問題視する声が出ている。ステーキング製品の不在やロールアップ重視の戦略が、競争力と収益基盤の弱体化を招いたとの指摘だ。
ブロックチェーンメディアBeInCryptoは5月31日(現地時間)、Ethereumエコシステム参加者のリード氏が、足元の不振について「市場サイクルや一時的な価格調整ではなく、製品戦略の判断ミスと実行の遅れが積み重なった結果だ」との見方を示したと報じた。
リード氏は、ICO初期からEthereumに関わり、現在もEthereumベースの開発を続けていると説明した。自身もETH保有者であり、今回の指摘は外部からの批判ではなく、エコシステム内部からの問題提起だと強調した。
同氏が根拠として挙げたのが、ETH/BTC比率の低下だ。Ethereumは2022年9月のMergeで、従来のプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)へ移行した。ETH/BTC比率は当時0.085前後まで上昇したが、5月末時点では0.028前後まで低下した。Ethereumの価格も足元で2000ドル(約30万円)近辺で推移し、直近1年では約21%下落している。
リード氏は、Merge当時の主要な訴求点だった「エネルギー使用量を99.95%削減」というメッセージが、機関投資家や利用者の需要とずれていたとみる。機関投資家は利回り、開発者はより速いファイナリティ、ユーザーはより低い取引コストを求めていたにもかかわらず、Ethereumは環境面のメッセージを前面に押し出したという。同じ時期、Solanaは処理速度を強く訴求していた。
ステーキング製品の欠如も大きな論点として挙がった。リード氏は、Mergeから3年が経過しても、Ethereumに独自のステーキングアプリが存在しない点を課題視する。現行の仕組みでは、最低32ETHを預け、自らバリデーターを運用する形が基本となる。このため多くのユーザーがLidoに流れ、開発者の間で中央集権化への懸念が続く中でも、Lidoがステーキング済みETHの約24%を占めているという。
リード氏は、「勝者を選ばない」という姿勢についても批判した。こうした考え方は、競争を避けたい組織の論理にすぎないと主張している。
ロードマップの面では、ロールアップ中心の戦略がEthereumベースレイヤーの収益基盤を弱めたと指摘した。2024年3月にEIP-4844が適用されて以降、ブロブ手数料は2024年から2025年の大半にわたり1wei近辺まで低下したという。その結果、Ethereumの四半期手数料収入は、2021年第4四半期の43億ドル(約6450億円)をピークに約95%減少したとしている。
一方、レイヤー2は独自の収益構造を拡大した。Arbitrumは自社のL2運営で90〜98%水準の高い利益率を確保しているとされ、Baseも2025年半ば時点でロールアップから約70%の利益を得たとされる。主要レイヤー2がそれぞれ独自トークンを発行したことで、エコシステム内の資金フローも分散したとの見方を示した。
リード氏は、こうした構造をSolanaと対比した。Solanaは統合型のレイヤー1構造を通じて、手数料の価値がネイティブトークンに直接帰属する形を示したという。また、PoS移行は2015年の時点でロードマップに盛り込まれていたにもかかわらず、実装まで7年を要したと指摘。その間にSolanaはメインネットβを立ち上げ、ウォレットや分散型取引所、マネーマーケットを迅速に整備したとした。
Ethereum共同創業者のヴィタリック・ブテリン氏の最近の発信も、批判の対象となった。リード氏は、2024年から2025年にかけてのブテリン氏の文章では、競争力強化よりも多元主義やネットワーク国家といったテーマが目立っていたと指摘する。これについて、競争環境に積極的に対応する文化というより、確立されたEthereumの文化的態度が表れていると解釈した。
今後の焦点は、Ethereum Foundationが製品実行のスピードと戦略の方向性をどこまで見直せるかにある。リード氏は、今後の市場サイクルにおけるETH/BTC比率の推移が、その成否を測る指標になるとみている。今回の批判は、Ethereumの低迷要因をマクロ市場ではなく、製品戦略、収益構造、資金流入経路の問題に求めた点で注目される。