ExxonMobilの上級副社長ニール・チャプマン氏が、世界の原油在庫の急減に警鐘を鳴らした。供給の正常化が進まなければ、ブレント原油が数週間以内に1バレル150~160ドルまで急騰する可能性があるという。
ブロックチェーン系メディアのBeInCryptoによると、チャプマン氏は5月29日(現地時間)の投資家向けイベントで、原油市場が「異例の低在庫水準」に近づいていると指摘した。深刻な供給逼迫が市場に表れるまでの猶予は、2~3週間しかないとの見方を示した。
背景には、ホルムズ海峡を巡る混乱がある。国際エネルギー機関(IEA)によると、3月と4月の世界の原油在庫は約2億4600万バレル減少した。さらに、ホルムズ海峡で輸送障害が発生して以降、在庫の取り崩しペースは一段と加速したという。
今月末までの累積供給損失は、10億バレルを超える可能性もある。テヘランによる封鎖によって、世界の原油輸送量の約5分の1が滞ったとの説明だ。
市場では、表面的な在庫指標以上に、実際の商業在庫の逼迫を問題視する声が強まっている。政府備蓄の放出や戦略備蓄の売却が一部のショックを吸収した一方で、需要家向けの商業在庫はより速いペースで減少したとされる。
政府備蓄が緩衝材として機能しても、商業在庫の減少が同時に進めば、需給の逼迫に耐えられる時間は限られる。チャプマン氏は、ExxonMobilの社内供給モデルもこうした流れを織り込んでいると説明した。
現物市場で買い手が限られた数量を奪い合う局面になれば、ブレント原油は1バレル150ドル近辺まで上昇し得るという。上振れシナリオとして、160ドルも視野に入るとした。
同様の警戒感は独立系アナリストの間でも広がっている。一部のトレーダーは、先物市場が現物市場の供給圧力を十分に織り込んでいないと指摘。原油グレード間の価格差拡大や、石油製品マージンの変化をその根拠に挙げている。
HFI Researchは、ガソリンと中間留分の在庫について、「給料日前のように逼迫した水準」にあると表現し、残りはわずか900万バレルだとした。現在の減少ペースが続けば、この900万バレルも2~3週間で枯渇する可能性があると見込む。
この見通しは、暗号資産やマクロ投資家にとっても無視できない材料となっている。国際原油価格の上昇がインフレ期待を押し上げ、中央銀行の金利見通しを一段と複雑にする可能性があるためだ。
BeInCryptoによると、市場はイランとホルムズ海峡を巡る緊張が高まるたびに、リスク資産に敏感に反応してきた。ビットコイン(BTC)も、過去に供給ショック懸念が強まった局面で下落したことがあるという。
今後の焦点は、現物供給が回復するかどうかにある。夏場の需要期とハリケーンシーズンが重なるなかで供給障害が長引けば、ガソリン不足への懸念も強まりそうだ。
もっとも、ブレント原油が150ドルを超える水準まで上昇すれば、需要減退を通じて需給バランスが再調整される可能性もある。今後数週間の在庫動向が、チャプマン氏の警告を裏付けるかどうかが、国際原油相場とリスク資産全般の焦点となる。