写真=スコット・ウCEO(Cognition公式ブログ)

米スタートアップCognitionのスコット・ウCEOは、同社のAIコーディングエージェント「Devin」が人間の開発者を置き換えるとの見方を否定した。AIツールの役割は雇用削減ではなく、開発者の生産性を引き上げ、開発能力を広げることにあると強調している。

米ITメディアTechCrunchが5月29日(現地時間)に報じたインタビューで、ウCEOは「これを人間の代替だと考えたことはない」と述べたうえで、「そうしたシナリオを語る人はいるが、当社の視点は当初からそこにはない」と話した。

Cognitionは、Devinを軸に「自動運転ソフトウェア開発(Self-driving Software Engineering)」の構想を打ち出し、注目を集めてきた。直近では企業価値260億ドルで評価され、10億ドル規模の新規資金調達にも成功している。

Devinは単なるコード補完ツールではなく、ソフトウェア開発を一連の工程で遂行する自律型エージェントを目指している。このため業界では、AIがソフトウェア開発者の役割を大きく代替し得るとの見方も出ていた。

ただ、ウCEOは、Devinの目的は開発者を減らすことではなく、開発力を拡大することだと説明する。「私たちも全員プログラマーだ」としたうえで、自身も9歳からコーディングを始めたと紹介。「私たちが描いてきた未来は、開発者をなくすことではなく、より多くのソフトウェアを生み出せるようにすることだ」と述べ、Devinを「開発者を助ける友人のような存在」と位置付けた。

実際、CognitionではDevinの活用が大きく進んでいる。同社によると、エンジニアがコミットしたコードの89%はDevinが作成した。残る大半も、昨年買収したAIコーディングスタートアップWindsurfのローカルエージェントが担っているという。

事実上、同社のソフトウェア開発の大半をAIが担っていることになる。それでもウCEOは、これを人間の開発者の役割縮小と結び付けるべきではないと主張する。

ウCEOは、AIエージェントが最も価値を発揮する領域として保守業務を挙げた。旧来システムを新しい環境に合わせて更新したり、アプリケーションを別のプラットフォームに移行したりするなど、開発者が敬遠しがちな反復作業を担うという。「エージェントは多くの骨の折れる仕事を軽減する」とし、その結果、プログラマーは創造や設計といった、より重要な業務に集中できるようになると述べた。

一方で、Devinの能力について過度な期待は禁物だとも指摘した。現時点の水準は、業務内容にもよるものの「ジュニアエンジニアと中堅エンジニアの中間程度」に近いとの認識を示した。完全自律で動くシニア開発者級のAIとみなすのは時期尚早だとしている。

Cognitionが掲げる「自動運転ソフトウェア開発」は、AIエージェントが継続的に学習と改善を重ね、より複雑な業務を段階的に担っていく方向性を示すものだ。ただしウCEOは、最終的な意思決定権は人間が持つべきだとの原則を明確にした。「何をすべきかは常に人間が決めなければならない」とし、「この原則はソフトウェア開発に限らず、ほかの職務にも当てはまるべきだ」と強調した。

Cognitionは、今後AIエージェントがカスタマーサービスや医療など幅広い産業に広がるとみている。その過程でも、AIの役割は人間の代替ではなく補完にあるべきだというのが同社の立場だ。生成AIの自律性が高まるなかでも、人間の統制権と創造性が中核的な価値であり続けるというメッセージを打ち出している。

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