2010年8月以降、一度も動いていなかった初期ビットコインのウォレットから、5月31日に20BTCが移動した。足元の価格ベースでは約147万ドル(約2億2050万円)に相当するが、サトシ・ナカモトの保有分である可能性は低いとみられている。
ブロックチェーンメディアのBeInCryptoによると、この動きはGalaxy Researchがブロック951828で確認した。市場では初期ウォレットの再稼働として注目を集めたものの、価格への影響は限られた。
対象のアドレスは「1CDSyXAQxro4FPUoqAQb」で始まる。約16年前に最後の受け取りが確認されて以降、長期間にわたって休眠状態にあった。時期的には、ビットコイン黎明期の採掘活動が広がり始めた頃と重なり、当時はCPUベースのマイニングが一般的で、ネットワーク参加者もまだ少なかった。
一方で、今回移動したコインをサトシ・ナカモト関連とみる向きは限定的だ。Galaxy Digitalのリサーチ責任者、アレックス・ソン氏は、同日朝に「サトシ時代」のコインが動いたとした上で、サトシ本人の保有分とはみていないとの見方を示した。
Galaxy Researchは、オンチェーン上のヒューリスティック分析を基に、サトシ推定のウォレット群とそれ以外の初期ウォレットを区別している。今回の20BTCは、サトシ関連とされる既存の移動パターンには一致しないと判断した。
市場の反応は落ち着いていた。ビットコインは送金前後も7万3608ドル前後で推移し、前日比では0.3%安だった。20BTCの規模は、ビットコインの現物日次取引高約163億ドルと比べれば小さい。
このため、価格動向は個別の長期休眠ウォレットの動きよりも、マクロ環境や資金フローの影響を強く受けていることが改めて示された格好だ。
2025年にも、初期採掘者のウォレットが再稼働する事例は複数確認されているが、市場が大きく動揺する場面はなかった。年初に8万BTC規模の「クジラ」の資金が取引所に移動した際も、相場全体に強い不安が広がるには至らなかった。
もっとも、初期ビットコインのウォレット移動は、規模の大小を問わず市場の関心を集めやすい。作成時期の古いコインほど、ビットコイン黎明期の参加者や初期採掘者との関連が取り沙汰されやすいためだ。特に2010年代初頭に作成されたウォレットは、ネットワークがなお実験段階にあった時期の痕跡として象徴的な意味合いを持つ。
ただ、長期休眠ウォレットの再稼働が、直ちに売り圧力につながるとは限らない。保有者がセキュリティ強化を目的にウォレットを切り替えたり、複数アドレスに分散していた資産を統合したり、相続や管理上の理由で資金を移したりするケースもあるためだ。
市場では、当該資金が今後取引所アドレスへ流入するか、追加の移動が発生するかが、実際の売却可能性を見極める材料になるとみられている。
今回移動した20BTCの最終的な送金先は、現時点では確認されていない。匿名の保有者が売却に向けて動いたのか、ウォレットを統合したのか、あるいは新しいアドレス形式へ移したのかは不明だ。実際に処分が行われるかどうかは、今後の資金移動先が焦点となる。
足元では、ビットコイン初期保有者による資産再配置が、価格上昇局面と重なる形で目立ち始めているとの見方もある。黎明期から保有を続けてきた長期投資家が段階的に資産を動かす流れが、2026年の市場を読む上での一要素になっており、今回の送金もその延長線上の事例として受け止められている。