6月11日に米国、メキシコ、カナダの3カ国で開幕する2026年FIFAワールドカップを前に、関連暗号資産市場が急速に広がっている。足元の市場は、FIFAと関係を持つ公式系プロジェクト、FIFA名を冠した非公式トークン、各国代表をテーマにした投機色の強いミームコインの3類型に分かれている。
FIFAは昨年、Avalanche基盤の独自レイヤー1ブロックチェーン「FIFAブロックチェーン」を立ち上げ、デジタルコレクタブル基盤「FIFA Collect」を移管した。立ち上げ後には8万5000超のウォレットアドレスが生成された。
同基盤を支えるAVAXは現在、約8.95ドル(約1343円)で推移している。時価総額は約38億6000万ドル(約5790億円)だ。
ファントークン分野の先行企業であるChiliz(CHZ)の時価総額は約3億5200万ドル(約528億円)。各国代表やクラブのトークン運営を手がける。
3月には、米規制当局がファントークンを証券ではなくデジタルコレクタブルに分類し、規制面の不透明感は後退した。ただ、CHZは直近1週間で10%安、1カ月で17.5%安と下落基調にあり、短期的な値動きには注意が必要だ。アルゼンチンのファントークン「ARG」は週間で6.5%上昇した一方、月間では47%安となっている。
FIFAのジャンニ・インファンティノ会長は2月、「FIFAトークンとFIFAコインについて、世界60億人のサッカーファンに向けた実質的なグローバル通貨として開発を検討している」と述べた。現時点で公式発行はないが、大会期間中に正式発表があれば、関連資産全体の見直しにつながるとの見方も出ている。
5月27日には、ADI PredictstreetとFanatics Marketsが、FIFA初の公式予測市場パートナーシップを米国の複数州で始めた。
一方で、ワールドカップ需要に便乗した非公式トークンも出回っている。最大規模の「FIFA」トークンは時価総額が約7700万ドル(約116億円)に達するが、FIFAとの公式な関係はない。
「FWC26」や「FIFAワールドカップ」など、類似名称のコントラクトアドレスも乱立しており、投資家が混同しやすい状況だ。
Solana基盤では、各国代表を題材にしたミームコイン群も形成されている。Pump.funで発行されたこれらのコインは、「WORLDCUP」を中核に、出場48カ国それぞれのミームコインが存在する。
WORLDCUPは直近24時間で約90%上昇し、時価総額は約1000万ドル(約15億円)に迫った。チーム別コインの取引手数料の一部をWORLDCUPの買い付けに回す仕組みだが、保有ウォレットの集中度は極めて高い。代表チームの敗退をきっかけに急な売りが出る可能性もある。
予測市場でもW杯関連の熱気は強い。PolymarketとKalshiの2プラットフォームにおける優勝国予測市場の累計取引高は、約4億1670万ドル(約625億円)に達している。現時点では、フランス、スペイン、イングランド、ブラジルが有力候補とみられている。
市場関係者は、公式パートナー系のAVAXやCHZ、各種ファントークンは提携や制度対応の進展に反応しやすく、各国別ファントークンは試合結果に敏感だとみる。一方、Solana系のミームコインはSNS上のセンチメントに大きく左右されるという。
このため、同じ「ワールドカップ関連銘柄」と一括りにして投資判断を下すのは危うい。3類型は価格変動の材料がそれぞれ異なるためだ。
最大の変数はFIFA自身の動向だ。大会期間中にFIFAコインの公式発行が発表されれば、関連資産全体が一気に再評価される可能性がある。
逆に、スイスの賭博規制当局によるNFT調査が否定的な結論に至れば、公式エコシステム全体に打撃が及ぶ可能性もある。投資に当たっては、コントラクトアドレス、流動性、保有者の集中度を確認したうえで、どの類型の資産なのかを見極めることが重要になる。