Red Hat Koreaのファン・インス常務は28日、企業のIT運用自動化を全社に拡大するには、個別の技術導入よりも先に組織ガバナンスと運用モデルの定義が必要になるとの見方を示した。部門ごとに環境や責任分担が分かれたままでは、自動化の適用範囲が広がるほど運用のばらつきや責任の所在の曖昧さが表面化しやすいと指摘した。
ファン常務は同日午後、Red Hat Koreaが蚕室のロッテワールドタワーで開催した「Red Hat Ansible Automate 2026」で、「チーム単位でスクリプトベースの自動化を進めることは比較的容易だが、全社に広げるとセキュリティや運用の不整合が避けられない」と述べた。その上で、全社展開では技術そのものより、運用モデルを含む組織設計を総合的に見直す必要があると強調した。
エンタープライズ環境で自動化の普及が進みにくい背景として、同氏は「環境の分散化」を挙げた。課題は技術的な分散にとどまらず、組織体制、プラットフォーム、目標、責任分担がそれぞれ異なる形で分かれている点にあるという。こうした状態では自動化の仕組みも部門ごとに分断されやすく、技術だけで組織間の断絶を埋めるのは難しいと説明した。
具体的には、データセンター、セキュリティ、ネットワーク、IT自動化運用の各組織がそれぞれ異なる要件を持つ上、自動化の対象も物理サーバ、仮想化基盤、クラウド、エッジ、AI環境へと広がっていると指摘した。
そのため、エンタープライズ向けの自動化は単なるツールやスクリプトの導入では完結しないとした。各組織の要件をどう統合するか、自動化の範囲をどこまで定めるか、運用責任を誰が担うか、導入後にどのような形で活用するかといった方針を事前に明確にしておく必要があると述べた。
Red Hat Ansibleは、複雑なITインフラとアプリケーションのデプロイをコードで自動化する、オープンソースのIT自動化エンジンだ。Red Hatは、オープンソースのAnsibleを企業向けに最適化した「Ansible Automation Platform(APP)」を軸に、エンタープライズ自動化分野での展開を強化している。
ファン常務はAPPについて、「単なる実行ツールではなく、自動化のライフサイクル全体を単一基盤でつなぐためのプラットフォームだ」と位置付けた。コンテンツ生成、実行とポリシー管理、分散実行の支援、イベント駆動型の対応、AIベースの生産性支援機能を統合的に提供するという。
また、組織ごとに自動化の運用方法が異なれば、開発や運用のリスクが高まり、運用標準もそろわず、責任の所在も不明確になると指摘した。APPは、自動化資産を再利用可能な形で集約し、短期的な導入プロジェクトではなく、企業の長期的な運用資産として活用するための基盤になると強調した。
自動化の成果指標の見直しも重要な論点として挙げた。ファン常務は「自動化チームはプレイブックの実行件数を成果として捉えがちだが、経営層が重視するのはサービスの安定性、運用スピード、障害の削減、デプロイ時間の短縮、運用コストだ」と説明した。
その上で、「自動化のKPIは実行件数ではなく、ビジネスをどれだけ速く、安全に運用できるかで測るべきだ。自動化組織は、経営陣が求める事業成果、すなわち企業価値の実現を支えるエンジンになる必要がある」と語った。
コスト面では、オープンソースベースの自動化ツールとエンタープライズ向けプラットフォームを、ライセンス費用だけで単純比較するのは現実的ではないとの認識を示した。実運用で重視すべきなのは、権限管理のミス、ガバナンスや運用標準の欠如、監査ツールの不在によって生じる見えにくいリスクコストだとした。
さらに、「自動化コストは総運用コストとリスク削減効果を含めて捉え直すべきだ」と述べた。自動化の効果についても、人員削減ではなく時間の再配分として定義すべきだとし、反復作業を減らすことで、ITエンジニアがより付加価値の高い戦略業務や障害予防に集中できると強調した。