写真=キム・ヒョンチョル氏(韓国人工知能協会長)

【キム・ヒョンチョル 韓国人工知能協会長】昨年10月、NVIDIAが韓国向けにGPUを26万枚供給すると発表したことは、「AI3大強国」入りを目指すうえでの成果として受け止められた。

ただ、その供給先を見ると大企業への集中が目立つ。Samsung Electronics向けの5万枚はHBMとファウンドリ歩留まりの最適化に向けた社内AIファクトリー、Hyundai Motor向けの5万枚は自動運転シミュレーション、SK向けの5万枚は自社AIファクトリー、Naver Cloud向けの6万枚はクラウド事業基盤に充てられる。

国家政策として産学官やスタートアップに配分できる数量は、全体の2割前後にとどまる。政府は1兆4600億ウォン規模の補正予算で、まずGPU1万3136枚を確保したが、実際の調達・運用主体はNaver Cloud、NHN Cloud、Kakaoの3社で、政府はそこから計算資源を借り受ける形を取る。

産学官への提供も、3社のデータセンター内で仮想化した計算資源の一部を割り当てる方式となる。利用期間は1課題当たり最長12カ月で、産業界は市場価格の5〜10%を自己負担する。

政府が確保したH200やB200は、学習と大規模な汎用計算に強い高性能GPUだ。H200 SXMは最大700W級で、B200系もシステム構成によっては、より大きな電力と冷却インフラを必要とする。数百枚から数千枚を束ねて巨大モデルを学習させる用途には適しており、国家規模の研究や大規模モデル開発に大型GPUクラスタが欠かせないことは間違いない。

一方で、すべてのAI需要を同じ方式で処理するのは現実的ではない。AIワークロードの重心は急速に学習から推論へ移っている。エージェント、バーティカルAI、フィジカルAIの普及が進むほど、重要になるのは超大規模学習ではなく、低遅延・低消費電力の推論基盤だ。

病院、工場、港湾、産業団地、学校、交通管制の現場で発生するデータを、すべて中央に集約して処理する方式には限界がある。データが生まれる場所の近くで判断し、すぐに反応できる仕組みが必要になる。

推論向けチップはすでに市場に存在し、韓国でもFuriosaAIやRebellionsがNPUを展開している。LG AI Research、KT Cloud、SKデータセンターを中心に導入事例も積み上がっている。

ただし、国産NPUは海外製GPUやNPUと比べて、性能、汎用性、ソフトウェアエコシステムの面で見劣りする。開発者体験も十分とは言えず、対応するモデルやフレームワークも限られる。大規模学習や汎用的なAI計算では、正面から競争しにくいのが実情だ。

だからこそ、政策設計が重要になる。国産NPUは保護や投資だけでは育たない。実際の顧客、実際の障害、実際のコスト、実際のSLAに向き合う場が不可欠だ。病院の画像読影、工場の異常検知、自治体のCCTV解析、交通管制、行政民願の自動化、学校の学習データ処理といった分野で継続的に使われてこそ、チップ、ドライバ、コンパイラ、周辺エコシステムは鍛えられる。

ところが政府がNVIDIA製GPUを市場価格の5〜10%水準で大量供給すれば、スタートアップがそちらを選ぶのは当然だ。性能や使い勝手にまだ課題を抱える国産NPUを、あえて試す理由は薄くなる。国産NPU企業にとっては、市場で競争力を磨くための時間そのものを確保しにくくなる。

その象徴が、全羅南道・海南で進むソラシド国家AIコンピューティングセンターだ。2028年までにGPU1万5000枚、2030年までに5万枚を段階的に整備する総事業費2兆4065億ウォンの大型プロジェクトだが、2度の入札不調を経て、公的出資比率は51%から30%未満へ引き下げられ、国産NPUの義務採用条項も削除された。

この結果、事業構造は大企業コンソーシアム主導の商用インフラ色を強めた。一方で、マイクロデータセンター事業の予算は273億ウォンにとどまる。兆ウォン単位の中央インフラに比べ、政策上の比重は明らかに小さい。

政府はソブリンAIを掲げるが、現行の構造ではそれが「NVIDIAのチップを韓国国内に置くこと」にとどまりかねない。真のデータ主権は別の次元で問われる。地方の製造工程データ、地域医療機関の画像データ、自治体のCCTV、学校の学習データ、産業団地の設備データを、発生した地域の中で処理できてこそ、ソブリンAIは実体を持つ。

その代案になり得るのが、公的な遊休資産と先端モビリティインフラ、分散推論拠点を組み合わせる発想だ。全国の累計廃校は4000カ所を超え、未活用の廃校だけでも数百カ所に上る。老朽産業団地も2025年時点で520カ所規模に増えた。電力、通信、交通のアクセス条件を備えた拠点を選べば、地域型AIインフラの候補地になり得る。

廃校や老朽産業団地は、既存の公有地や一部基盤施設を活用できるため、新たな用地取得コストを抑えやすい。データセンター級の電力・冷却・通信インフラは別途補強が必要だが、更地に大型センターを新設するのとは出発点が異なる。

ここにUAMのバーティポートを組み合わせる構想もある。バーティポートは単なる離着陸場ではない。リアルタイム管制、経路最適化、衝突回避、異常接近の検知など、低遅延AIを必要とする需要を生むインフラでもある。

バーティポートと分散推論拠点を一体で設計すれば、交通インフラとAIインフラを同時に整備できる。広域市単位では、バーティポートと推論センター、スタートアップ向けコロケーションを統合した5〜10MW級拠点を置く。市郡区単位では、廃校や老朽化した公有地を活用した1〜3MW級拠点を整備し、洞単位では図書館や区庁付属施設を活用した100kW級のコンテナノードを置く。そうした階層設計によって、中央のハイパースケール基盤と地域の推論拠点は相互補完の関係を築ける。

分散推論拠点に国産NPUを優先配置すれば、2つの市場が同時に開く。地域は自らのデータを地域内で処理でき、国産AI半導体企業は実需要を獲得できる。

国産NPUを性能不足だけを理由に排除すれば、いつまでも不足したままだ。かといって、未検証の技術を無条件で現場に投入すれば、利用者側が不利益を被る。必要なのはその中間にある現実的な設計だ。

地域の推論拠点を、国産NPUの実証と実運用の場として設計すべきである。初期段階ではGPUとNPUを混在配置し、ワークロードごとの性能、電力、コストを公開比較しながら、得意分野から順に任せ、不足する領域は迅速に改善していく。産業は保護だけでは育たないが、使われる機会がなければなおさら育たない。

もっとも、この構想には行政上の壁がある。廃校は教育部と教育庁、老朽産業団地は産業通商資源部、バーティポートは国土交通部、データセンターは科学技術情報通信部、均衡発展は行政安全部の所管だ。5省庁が関わる事業は、韓国の行政構造では前に進みにくい。

マイクロデータセンター予算が273億ウォン規模に縮小した背景も、ここにある。科学技術情報通信部の人員が限られるなか、中央政府が数十の圏域にまたがる分散インフラを一度に企画し、執行するのは難しい。中央政府は大枠の方針と予算は示せても、地域の用地、電力、許認可、産業需要を束ねる作業までは担えない。

だからこそ、6月3日の地方選挙を戦う候補者の役割が重要になる。次期地方政府に求められるのは、単なる公約の発表ではない。地域の遊休資産と産業需要を束ね、中央政府に逆提案することだ。それができる権限を持つのは自治体首長だからである。

第1は、遊休資産の所有・管理権だ。廃校の活用には教育監と首長の連携が欠かせず、老朽産業団地の再生用地や公立図書館、区庁付属施設の活用も自治体が動かなければ進まない。中央政府が地域の用地を直接用意することはできない。

第2は、需要の統合力である。圏域内の病院、学校、産業団地、交通管制、行政データを1つのAIワークロードとして束ねられる主体は自治体に限られる。需要が集まって初めてインフラが成立し、インフラが整ってこそ企業も集積する。

第3は、コンソーシアム組成の正当性だ。自治体、圏域大学、地域病院、産業団地、民間コロケーション事業者、国産NPU企業が参加するSPVが中央政府の公募に応募してこそ、事業は具体性を持つ。

商用データセンターはソウル・首都圏への集中度が極めて高いとされ、データセンター全体と電力需要の両面で首都圏偏重は明白だ。これまで地方は均衡発展のスローガンのなかで受け身の立場に置かれてきたが、今回はそれを変える余地がある。

自地域の廃校用地、老朽産業団地の再生計画、バーティポート候補地、地域病院と製造業のデータを束ね、「AI分散インフラ・パッケージ」を自ら設計する首長が必要だ。用地、電力、許認可、産業需要を同時に結び付けられる権限は、そのポストにある。

大規模GPU中心であらゆるAI需要を処理するのは現実的ではない。国産NPUがなお発展途上にあるのは事実だが、その不足を理由に実市場から締め出せば、いつまでも追いつけない。技術格差は研究室だけでは縮まらない。市場で顧客と向き合い、障害を経験し、コストを下げ、電力効率を示し、開発者が使いやすいエコシステムを築くなかでしか埋まらない。

中央のハイパースケール基盤は必要であり、巨大モデルの学習や国家規模の研究には大型GPUクラスタが欠かせない。ただ、それだけでは産業は育たない。地域ごとに推論拠点を整備し、国産NPUが市場と向き合う実証の場を作る必要がある。GPUとNPUを併設し、ワークロード別に性能、電力、コストを比較しながら、公的需要で初期市場を開くべきだ。その青写真を最も具体化できるのは、次期自治体首長である。

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