米Binance共同創業者のイー・ハー氏が、米経済誌Fortuneの「最も影響力のあるビジネス女性」リストに選ばれた。暗号資産業界出身の経営者が同リストに入るのは初めてという。
ブロックチェーンメディアのBeInCryptoが27日(現地時間)に報じたところ、イー氏はFortuneの2026年版ランキングで64位に入った。金融や流通、Fortune500企業のテック幹部らが並ぶ同ランキングに、暗号資産業界の経営者が名を連ねるのは初めてだ。
イー氏は2025年12月にBinanceの共同CEOに就任しており、就任から数カ月で今回の選出に至った。
イー氏は2014年、中国のテレビ業界から暗号資産業界に転じ、OKCoin(現OKX)でマーケティング責任者を務めた。当時無名だったエンジニア、チャンポン・ジャオ(CZ)氏をCTOとして迎え入れ、その後、両氏は2017年にBinanceを共同創業した。創業初期は、イー氏がマーケティング、ブランド戦略、グローバルでのユーザー獲得を担い、チャンポン・ジャオ氏が技術組織を率いた。
Binanceの運営面でも、イー氏はユーザー重視の姿勢を前面に打ち出してきた。新規採用者には役職を問わず顧客対応を経験させる方針を採り、自らも顧客対応責任者としての役割を強調している。SNSでは「今もChief Customer Service Officerとして働いている。これからも努力を続ける」と投稿し、ユーザーとの直接対話や詐欺被害の報告対応にも関わってきたとされる。
Fortuneはイー氏の生い立ちにも触れている。1986年に中国・四川省の農村で生まれ、幼少期は電気や水道が安定しない環境で育った。9歳で父親を亡くし、16歳で飲料の販促業務に就いたほか、その後は旅行番組の司会者として働いた。30代でBinanceのグローバル展開に対応するため、英語を独学したという。Fortuneによると、イー氏は持ち株会社を通じてBinance株式の約10%を保有している。
影響力は取引所事業にとどまらない。イー氏は2025年1月、Binance Labsから改称したYZi Labsを率いる立場にも就いた。同組織はWeb3に加え、AIやバイオテックにも投資領域を広げている。運用資産は100億ドル超、投資先は300社超と報じられている。
共同CEO就任の背景には、Binanceを巡る法的リスクへの対応もあった。イー氏は長く表舞台に立たない経営幹部として組織運営を担ってきたが、2025年12月にリチャード・テン氏とともに共同CEOに就任した。リチャード・テン氏はコンプライアンスと規制対応を担う。イー氏の昇格は、チャンポン・ジャオ氏の2023年の有罪認定と、米国での43億ドル規模の和解を経た後に行われた。当時は、Binanceの経営体制を揺るがしかねない最大の危機と受け止められていた。
イー氏は今回の選出について、個人の成果というより業界全体にとっての節目だと強調した。「Fortuneのリストで、暗号資産業界出身の経営者として初めて認められたことを、非常に謙虚に受け止めている。Binanceを一から築いてきた歩みは、私にとって極めて個人的な意味を持つ」とコメント。さらに、「この評価は私個人の名前で示されているが、Binanceのチームとユーザー、サトシ・ナカモト、そしてこの産業を世界的な潮流へと押し上げた暗号資産コミュニティ全体のものだ」と述べた。
今回のランクインは、イー氏の存在感の高まりとともに、暗号資産業界の経営陣に対する評価の広がりを示す事例となった。今後、Binanceが次の規制対応局面をどう乗り切るかによって、イー氏自身と業界全体への評価も改めて問われることになりそうだ。