ヒューマノイドAIロボットを手がける日本のスタートアップATOMは、シードラウンドで30億円を調達した。製造業や物流現場向けのヒューマノイド開発に加え、現実の物理環境を再現して学習に生かす「ワールドモデル」の構築も進める。
ITmediaが27日に報じたところによると、調達資金はAIエンジニアの採用と開発インフラの強化に充てる。ANRI、Beyond Next Ventures、JAFCOグループがリード投資家として参画した。
このほか、ALPHA、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、スミショー・ベンチャー・パートナーズ、Blue Lab、Mitsubishi UFJ Capital、SMBCベンチャーキャピタルも出資した。金融系VCや政府系ファンドを含む幅広い投資家が名を連ねた格好だ。
ATOMは、資金使途を試作機開発だけにとどめない方針も示した。アオキ・シュンスケ社長は、ヒューマノイドAIロボット本体の開発に加え、現実世界の物理環境をシミュレーションできるワールドモデルの開発に取り組むと明らかにした。あわせて、サプライチェーンの構築やデータ収集基盤の設計・整備も進める。
主な対象は製造業と物流現場だ。フィジカルAIとロボット技術を組み合わせ、人の作業を支援・代替できるヒューマノイドの量産を目指す。ハードウェアに加え、データ、シミュレーション、生産体制までを一体で構築する戦略をとる。
同社が重視するワールドモデルは、ヒューマノイド産業の中核技術の一つと位置付けられる。実際の現場で安定稼働させるには、多様な物理環境や変数を仮想空間で繰り返し学習・検証できる体制が欠かせないためだ。ATOMは学習データを自前で確保するため、独自のデータ収集基盤も整備する計画という。
サプライチェーンの構築を初期段階から資金調達計画に組み込んだ点も特徴だ。ヒューマノイドの事業化では、AIソフトウェアだけでなく、アクチュエーターやセンサー、バッテリーといった部材の調達と生産体制の確立が重要になる。ATOMは生産基盤まで自前で確保する方向を打ち出した。
ATOMは2025年11月設立のスタートアップ。設立から間もない段階で、金融系VCや政府系資金を含む大型のシード調達を実現し、日本のヒューマノイド市場で存在感を高めている。製造業や物流の現場で人の作業を支援・代替するロボットの開発と量産を掲げ、「日本のGDPを1%押し上げる」とのビジョンも示している。
業界では今回の調達について、日本のヒューマノイド産業が研究開発中心の段階から、産業現場への実装と生産体制の構築へ軸足を移しつつあることを示す事例との見方が出ている。ロボット本体、ワールドモデル、データ基盤、サプライチェーンをどこまで迅速に結び付け、事業化につなげられるかが今後の焦点となる。