Audi Q9の運転席まわり 写真=Audi

Audiは、世界共通モデルを軸にした従来の車両開発戦略を見直し、米国や中国など主要市場ごとの最適化を強化する。ブランドとしての一貫性は維持しつつ、商品企画や生産体制は地域ごとの需要に合わせて見直す方針だ。

米ITメディアArs Technicaが26日(現地時間)に報じたところによると、ゲルノート・デルナーCEOは、グローバルブランド戦略は維持しながらも、車両開発では地域ごとの顧客ニーズをこれまで以上に重視する考えを示した。

その象徴として挙げたのが新型Q9だ。デルナー氏は、Q9について「米国市場を主眼に開発した初のモデル」と説明。欧州で先行投入したモデルを米国へ展開する従来型ではなく、まず米国市場を優先し、その後に世界展開する流れへ切り替える考えを明らかにした。

車両設計でも米国市場の嗜好を色濃く反映した。大型タンブラーが入るカップホルダーを採用したほか、A5、A6、Q5で導入していたスマートドアパネルではなく、独立した物理スイッチを配置。空調性能やシート、ルーフ設計も米国の顧客ニーズに合わせて調整したという。

一方で、中国市場には別の戦略が必要だとの認識も示した。米国と欧州では相当数の車種を共有できるとしつつ、中国については「より多くの『Local for Local』戦略が必要だ」と言及。現地生産に加え、サプライチェーンやエコシステムも中国市場を軸に再構築する必要があるとした。

デルナー氏は、最近訪れた北京国際モーターショーの印象として「グローバル製品の時代は終わった」と語った。中国では、単純な輸出型モデルだけでは競争が難しく、現地の技術や生産体制と結び付いた最適化が欠かせないとの見方だ。

こうした動きは、自動車業界全体の潮流とも重なる。コロナ禍後のサプライチェーン再編や地政学リスクの高まりを受け、グローバルメーカー各社は単一プラットフォームによる共通化よりも、地域ごとの開発・生産体制の強化へ軸足を移しつつある。

Audiは今後、高性能モデルの拡充の可能性にも言及した。デルナー氏は、大型SUVとV8エンジンの組み合わせについて「非常に相性が良い」と評価し、LamborghiniのテメラリオV8を含むVolkswagen Group内での技術共有の可能性にも触れた。ただ、次世代Audi R8の再投入については明言を避けた。

米国市場では、ワゴンラインアップ拡充の余地も残る。現在の販売はセダンとSUVが中心だが、デルナー氏はRSやオールロード系の高性能ワゴンが米国の嗜好に合う可能性があると説明。ディーラーからもRSワゴン導入を求める声が継続的に上がっているとした。

今回の発言は、単なる車種戦略の見直しにとどまらず、生産やサプライチェーンの構造そのものを地域単位で再設計する方向性を示したものといえそうだ。Audiの新車戦略は、欧州共通モデル中心から、米国優先の開発、中国での現地化強化、そしてその後のグローバル展開へと比重を移していく可能性がある。

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