写真=NVIDIAのジェンスン・フアンCEO(Shutterstock)

NVIDIAのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)が9年前に語った「AIがソフトウェアをのみ込む」との見方が、AI産業の再編が進むなかで改めて注目を集めている。SaaS市場への逆風やエージェントAIの台頭を受け、当時の発言を先見的だったとみる向きが広がっている。

米TechRadarが5月26日(現地時間)に報じたところによると、フアン氏は過去のインタビューで、「ソフトウェアが世界をのみ込んでいるが、AIがソフトウェアをのみ込む」と語っていた。

この発言は、Googleの研究チームがTransformerに関する論文を発表する直前、MIT Technology Reviewのインタビューで出たとされる。

当時のNVIDIAは、GPUメーカーからAIインフラ企業への転換を進めていた時期だった。GPUのディープラーニング学習への活用を押し広げる一方、現在では世界有数のAIイベントとなったGTCも、この頃から本格的に規模を拡大していった。

一方で、市場ではSaaS企業の存在感が急速に高まっていた。クラウド移行の進展とコンピューティング資源へのアクセス拡大を追い風に、SaaSは企業向けITの中核とみなされていた。

そうしたなか、フアン氏はAIが既存ソフトウェアの使われ方だけでなく、産業のバリューチェーンそのものを変える可能性があるとみていた。単なる機能追加ではなく、ソフトウェア産業の構造自体が組み替わる可能性を示していたことになる。

足元では、この見方が現実のものとなりつつあるとの受け止めが強まっている。AnthropicなどのAI企業が新モデルを投入するたびに、既存のSaaS業界には圧力がかかっているとの評価が続いている。

業界内では、AIが従来のソフトウェア領域を侵食する動きを「SaaSmageddon」と呼ぶ向きもある。

とりわけ警戒感が強いのが、エージェントAIの広がりだ。これまで人が直接操作してきたソフトウェア機能の一部をAIエージェントが代替できるようになれば、ソフトウェアの役割そのものが縮小しかねないためだ。

反復作業や情報検索、業務自動化といった分野では、すでにAIが一部機能を代替し始めているとの見方も出ている。

もっとも、TechRadarはソフトウェア産業の衰退を断定してはいない。SaaS企業が圧力を受けているのは事実だが、全面的な代替に至ったわけではないと指摘した。

焦点は、既存のソフトウェア企業がAIをどこまで迅速に取り込み、事業構造を再編できるかにあるという。

その変化の中心にいるのが、なおNVIDIAだ。かつてはグラフィックスカード企業として知られた同社は、いまやAIインフラ競争を支える中核サプライヤーとして位置付けられている。

世界の大手テック企業やスタートアップは、AIモデルの学習と推論に向けてNVIDIA製GPUの確保を競っており、同社のAIハードウェアはデータセンターへの浸透を急速に進めている。

業界では今回の再評価を、過去の発言の掘り起こしにとどまらない動きと受け止めている。AIが既存ソフトウェア産業の地位をどこまで揺るがすのか、そしてソフトウェア企業がAIを取り込みながら新たな市場秩序を築けるのかが、今後の焦点となりそうだ。

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