NHN Cloudは5月26日、AIフルスタックブランド「FactoryX」を立ち上げたと発表した。GPUインフラから運用最適化、AIエージェント実行環境までを一体で提供し、2027年までに全社売上に占めるAI関連売上の比率を50%まで引き上げる方針を示した。
同日、ソウル市中区のザ・プラザホテルで開いた記者会見で、NHN Cloud代表のキム・ドンフン氏は「AIの主戦場は巨大モデルそのものではなく、ビジネスで実際に使える実行環境へ移っている」と説明した。その上で、7年間にわたるGPUインフラの構築・運用経験を基に、安定稼働とコスト最適化を両立するフルスタックサービスを提供すると述べた。
FactoryXは、インフラ、プラットフォーム、サービスの3レイヤーで構成する。GPUの調達・運用からリソース管理、AIエージェントの活用までをカバーするのが特徴だ。
同社によると、世界のAIインフラ市場は2030年までに9394億ドル規模に拡大する見通しで、年平均成長率は20%を超える。韓国国内でも、今年はAIインフラ分野だけで2兆5000億ウォンが投じられるとしている。
インフラレイヤーの中核となるのが、エクサスケール級のAIクラスタだ。新設したデータセンター「FactoryX Seoul」には、NVIDIA Blackwell(B200)を7656基導入した。総計27.4エクサフロップスの計算性能を持ち、単一クラスタとしては4080基を中核に据える。
NHN Cloudの最高インフラ責任者(CIO)、カン・ミンス氏は、GPUサーバーの確保に26週間以上、InfiniBandのスイッチやケーブルの調達に48週間以上を要すると説明した。設置まで含めると、プロジェクト全体で1年以上かかる計算になるという。現在、同社が構築済みのGPUリソースはほぼ100%稼働しているとしている。
冷却方式でも高密度実装を前提にした設計を採用した。GPUの消費電力は、H100が700ワット、B200が1200ワット、Rubin(R100)は1500ワット近くに達するとされ、世代が進むにつれて発熱量も増している。
同社は、ラック当たり75キロワット級の高密度環境に対応する100%水冷方式の冷却システムを導入した。空冷方式と比べ、年間のGPU障害率は3分の1の水準まで低下し、平均無故障時間は18万時間から48万時間に伸びたという。水冷方式AIサーバーの適用比率も、2025年の23%から今年は57%へ急伸する見通しだとした。
プラットフォームレイヤーでは、自社開発のGPU統合管理基盤「GPU Live」を提供する。GPUの遊休によるリソースとコストの無駄を減らすのが狙いだ。
学習と推論のワークロードを自動で切り分け、リソースを動的に割り当てる。大規模な分散学習が必要な場合は大規模クラスタを占有し、推論向けにはリソースを細かく割り当ててサービング用エンドポイントを生成する。組織ごとのポリシーに基づく優先順位管理や、リアルタイムの統合モニタリングにも対応する。
同社によれば、GPU Liveを適用することで、コールドスタート時のレイテンシは75秒から1.2秒へ短縮でき、最大61倍の改善効果が見込める。GPU利用率も平均で2倍以上に高まるという。
最高技術責任者(CTO)のキム・テヒョン氏は、「H100が1基遊休状態になると、1時間当たり2.1ドルが無駄になる。1000基のクラスタを50%しか使えない場合、年間では約920万ドルが無駄になる計算だ」と説明した。
その上で、「学習は長時間に及ぶ一方、推論は短時間かつ高頻度で発生し、ワークロードの特性が全く異なる。ところが、現在のアーキテクチャは学習側に最適化されている」と述べた。
同社は、今後拡大が見込まれる推論需要にも対応を進める。キム・ドンフン氏は「これまでは学習需要が圧倒的に大きく、それに合わせてサービスを提供してきた」とした上で、「次世代モデルが本格化する来年が、NPU市場拡大のタイミングになる」との見方を示した。
NHN Cloudは現在、光州国家AIデータセンターで、国産NPUベースのサービスを11ペタフロップス規模で運用しているという。
サービスレイヤーでは、企業向けAIエージェント製品「Project X」を今年下半期に投入する予定だ。自然言語ベースで、企業ごとの要件に応じたカスタムAIエージェントを設計できるようにする。
NHN Enterprise代表のアン・ソンミン氏は、AIエージェントが自律的に判断して必要なツールを呼び出し、人手を介さずに業務を完了できるクラウド環境を提供すると説明した。セキュリティ、企業ワークロード、コストという3つの課題を同時に解決できる設計だとしている。
提供形態はプライベートとパブリックの2種類。プライベート型は企業環境に合わせて構築し、パブリック型ではスタートアップや個人でも標準環境上で商用モデルやオープンモデルを利用できるという。
業績面では、AI関連売上比率を2025年の13%から、2026年に38%、2027年に50%へ引き上げる目標を掲げた。全社売上高の成長率は年24%以上を見込み、GPU事業の拡大を織り込んだ場合は30%以上を目指す。年末には通期での黒字転換も見込むとしている。
同社は今年の政府GPU構築事業には参加しなかった一方、再来年の事業を視野に新たなデータセンターの準備を進めている。キム・ドンフン氏は「昨年受注した事業が今年から本格稼働しており、運用に集中した」と説明した。
その上で、「現在確保しているリソースは、今年の新規構築分を上回る規模だ。4080基の単一クラスタサービスは、来年まで韓国内最大級を維持する」と述べた。
公共分野での新規案件受注率は60%以上を維持しているという。キム・ドンフン氏は「現在のAI市場は政府が主導し、民間企業がインフラを活用する構図になっている。いかに早く安定的なサービスを提供し、効率を高められるかで市場機会は変わる」と語った。
さらに、「国内企業がデータ主権を守りながらAIビジネスを展開するには、独自のインフラエコシステムが不可欠だ」とした上で、「AI G3強国への飛躍を支える、国家代表級のAIインフラ企業を目指す」と強調した。