写真=Samsung Electro-Mechanics。AIサーバーの高消費電力化を背景に、高温環境に対応するMLCC需要が高まっている。

Samsung Electro-Mechanicsが、AIインフラ向けを中心に大型投資を加速する。今後3年の投資額は過去10年分に相当する規模となる見通しで、2026年の全社設備投資(CAPEX)も前年比で2倍超に拡大する見込みだ。AIサーバー向けMLCCとFC-BGAの需給逼迫を背景に、価格上昇と長期供給契約の拡大が進んでいる。

主要証券各社も強気の見方を示している。主要5社は同社の目標株価を一斉に60万ウォン台から105万〜110万ウォンへ引き上げた。市場では、今回の異例の投資判断の背景に、複数製品で価格上昇局面に入ったとの見方が広がっている。

IBK投資証券とアイエム証券によると、同社の2026年CAPEXは前年比で2倍超となる見通しだ。今後3年間の投資規模も過去を大きく上回る。これらの投資は、AI分野のビッグテック顧客との長期供給契約(LTA)を前提とした受注型投資と位置付けられており、需要の確度が高い案件に基づくものとみられている。

こうした需要は、すでに2026年1〜3月期の業績にも表れている。営業利益は2806億ウォンと前年同期比39.9%増加した。一時的な退職給付費用714億ウォンを除いた実質営業利益は3520億ウォンに達した。売上高も3兆2092億ウォンと、四半期ベースで過去最高を更新した。

なかでも成長をけん引しているのが積層セラミックコンデンサー(MLCC)だ。SK証券によると、1〜3月期のMLCC稼働率は91%となり、需要が落ち込みやすい時期にもかかわらず、5年ぶりに90%を上回った。受注額の出荷額に対する比率は1.1〜1.2まで上昇しており、需給は一段と引き締まっている。在庫も適正水準とされる40日を下回り、4週間程度まで低下した。

価格面でも上昇余地が意識されている。Murataが短期的な値上げは行わない方針を示した一方、ユジン投資証券はSamsung Electro-MechanicsのMLCC平均販売価格が2026年に14%、2027年に15%上昇すると予想した。

値上げの流れはパッケージ基板にも波及している。1〜3月期のFC-BGA売上高は4220億ウォンで、前四半期比21.6%増となった。パッケージソリューション事業に占める構成比は58%に達した。テシン証券は、2026年のFC-BGA売上高が1兆9400億ウォンと前年比66.7%増になると見込んでいる。

売上構成も変わりつつある。これまでPC中心だったFC-BGA事業は、2027年にはサーバー・ネットワーク向けの比率が70%まで高まる見通しだ。アイエム証券は、3年前にはFC-BGA売上高に占めるPC向け比率が50%近かったと分析している。

2026年10〜12月期にはFC-BGAのフル稼働入りが見込まれており、その前段階となる4〜6月期中にも追加投資の意思決定が続くとの観測が出ている。Ibidenの資料によると、AIサーバー向けICパッケージ基板の需要は、2024年比で2026年に1.8倍、2027年に2.5倍へ拡大する見通しだ。

これまで収益性が低かったBGAでも、価格是正の動きが出始めている。BGAの営業利益率は4%前後にとどまる一方、競合各社は15〜23%を確保しているとされる。SK証券は、収益性の改善余地が20ポイント超残っているとの見方を示した。

一方で、単なる値上げにとどまらず、取引構造そのものの変化も進んでいる。アイエム証券によると、MLCCは従来、必要な時に必要量を調達する短納期取引が一般的だった。だが、1〜3月期の決算説明会で経営陣は「長期供給契約」や「バインディング」といった表現を繰り返し用いた。

背景には、AIサーバー向け需要の急拡大がある。MLCC搭載量はAIサーバー1台当たりで一般サーバーの8倍、ラック単位では90倍以上に増えるとされ、顧客側も2〜3年単位での事前需給計画を求めるようになっている。ICは設計から量産まで通常2〜3年を要するため、AI向けMLCCでは事前の需給契約が事実上不可欠になりつつあるとの見方が出ている。

もっとも、好材料ばかりではない。短期的なリスクとしてまず意識されるのが、CAPEX急増に伴うキャッシュフロー負担と減価償却費の増加だ。新規投資分の本格稼働は2028年以降になる見通しで、それまでは売上寄与が限定的な一方、費用負担が先行する可能性がある。

事業部門ごとの濃淡も無視できない。IBK投資証券は、光学事業の売上高が4〜6月期に閑散期の影響で1〜3月期比10.3%減少し、BGAのIT向け出荷量も7.8%減ると予想した。AIインフラ関連需要と、IT・モバイル向け需要の二極化が短期業績の焦点になる。

競争環境にも変化の兆しがある。Murataは価格据え置き方針を示しながらも、800億円の緊急追加投資を実施した。AIサーバー向けMLCC売上高の年平均成長率見通しも、従来の30%から80%超へ引き上げている。

ユジン投資証券は、AIサーバー向けMLCC市場で優位に立つSamsung Electro-Mechanicsが、高付加価値・高圧製品へのシフトによる売上構成の改善を通じて、平均販売価格の上昇を主導すると分析した。価格競争ではなく、製品ミックスで競う構造へ移行する可能性があるという。

今後の注目点は、2026年10〜12月期のFC-BGAフル稼働入りと、その直前の追加投資判断のタイミングだ。テシン証券は、新規投資分が稼働する2028年には、同社がAIサーバーおよびデータセンター向けFC-BGAで首位に浮上する可能性もあると分析している。業界関係者は、短納期中心の取引からLTAベースの受注型事業への転換が定着すれば、同社は単なる部品メーカーを超え、AIインフラの供給網を担う企業へと進化し得るとみている。

キーワード

#Samsung Electro-Mechanics #MLCC #FC-BGA #AIサーバー #CAPEX #長期供給契約 #パッケージ基板
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.