生成AIの普及で大学の課題設計や評価手法の見直しが迫られている。写真=Reve AI

生成AIの普及を受け、大学では課題設計や学習評価の前提が揺らいでいる。教員の負担は授業運営そのものより、AIの不正利用を見抜く作業に傾きつつあり、形成的評価も機能しにくくなっている。対策として口頭試験や監督下での手書き試験に回帰する動きもあるが、非同期型のオンライン授業では現実的な運用が難しい。

米ITメディアArs Technicaが13日(現地時間)、報じた。非同期型のオンライン授業を担当してきた大学講師は、ChatGPTの登場以降、学生の学習評価と課題運用は従来とは別物になったと指摘した。

この講師によると、録画中心のオンライン授業は以前から学生の離脱を防ぎにくかったが、足元では学習意欲の低い学生が課題を飛ばす代わりに、AIが生成した“それらしく見える提出物”を出す例が増えているという。

従来の盗用と異なり、LLMを使ったかどうかは判定が難しい。異議申し立てに備えた説明責任も重くなった。かつては盗用の有無を判断すればよかったが、今は教員が“探偵役”のように不自然さを拾い上げなければならない状況だという。

問題は、不正の判定にとどまらない。学習プロセスそのものが崩れかねない点にある。学生が教育の目的を「正しい答えを出すこと」や「単位を取ること」だと受け止めやすくなる一方、エッセイや記述式課題は本来、結論そのものより思考の過程に意味がある。そこをLLMに置き換えれば、学生の学びとして残るものは乏しいという見方だ。

講師は、LLMにエッセイを書かせる行為を「フォークリフトでジムに入るようなもの」と例えた。重りを持ち上げることはできても、本人の筋力は鍛えられないという意味だ。

実際、授業現場では変化が表れている。講師が2019年から出題してきた、講義内容を踏まえて自分の考えを展開しなければ解けない設問では、ChatGPT登場前の正答率は約30%だった。

ところが直近2年間は、正答率が半数を超えたという。講師は、同じ問いをChatGPTに入力した際に繰り返し現れる表現が、学生の解答にも頻繁に見られたと説明している。

学生側は単なる情報検索の延長だと捉えるかもしれないが、質問を入力し、返ってきた答えを書き写す行為は、実質的にはコピー・アンド・ペーストと大差ないと講師はみる。

こうした変化は、形成的評価の意味も薄れさせている。小テストや短い記述課題は、学生が概念を理解しているかを確認する手段として機能してきた。しかし、それをLLMに任せれば、教員にとっても学生にとっても時間の浪費になりかねないという。

さらに最近では、エージェント型ブラウザが講座全体のクイズをまとめて処理できる水準に近づいているとも指摘した。

大学側は対策として、口頭試験や監督下での手書き試験を再導入し始めている。ただ、非同期型のオンライン授業では、こうした方法をそのまま適用するのは難しい。

オンライン授業は、障害のある学生やキャンパスから離れた場所に住む学生、フルタイム勤務やケアと学業を両立する学生にとって重要な学習手段だ。オンライン授業そのものを後退させれば、こうした層にしわ寄せが及ぶと講師はみている。

対面授業でも事情は大きく変わらない。LLMの不正利用を防ぐために課題を作り替えた結果、かえって教育の質が落ちるケースが少なくないという。かつて有効だった文章作成課題は、真っ先に姿を消しつつある。

例として、以前は科学的要素と非現実的要素を織り交ぜたハリウッド風の災害映画のあらすじを書かせていたが、今ではLLMが10秒ほどで似た形式の文章を生成できるため、課題として維持できなくなったと説明した。

教員側の懸念も強い。約3000人の大学教員を対象にした調査では、85%がLLMは学生の批判的思考力の形成を弱めると答え、72%がLLM利用の管理に難しさを感じていると回答した。

それでも高等教育の現場では、学生に「AIを効果的に使う方法」を教えるよう求められる場面が多いという。だが講師は、その多くが結局、AIが書いた文章を学生に批評させる形に落ち着いていると指摘した。

その狙いは、皮肉にも「LLMに文章作成を任せるべきではない」と学生に気付かせることにあるという。

現場の教員が感じる疲弊は、単なる技術不安とは性質が異なる。電卓導入時のように一部機能を制限しながら共存を図る段階ではなく、教育活動のほぼ全域が揺さぶられているとの認識が強い。

現在のAIは、教育を革新し学習を強化するというより、長年にわたり学生の学びを支えてきた活動を実践しにくくしている――。大学現場では、そんな懸念が広がっている。

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