Circleのユーロ建てステーブルコイン「EURC」が、欧州のステーブルコイン市場で存在感を強めている。もっとも、市場ではその拡大について、製品競争力の結果というより、規制対応の先行と政策環境の変化が追い風になったとの見方も出ている。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが10日(現地時間)に報じたところによると、欧州発のプロジェクトが存在するにもかかわらず、Circleが市場で先行した点が議論を呼んでいる。DeFiアナリストのイグナスはこれを「欧州の失敗」と表現し、ビッグテック、クラウド、人工知能(AI)に続き、ステーブルコイン分野でも欧州は後れを取っていると指摘した。
イグナスは、EURCはCircleの主力事業とは言い難いとみている。EURCの時価総額は4億6000万ドル規模にとどまる一方、主力のUSDCは780億ドルを超えるという。そのうえで、Circleは製品力で勝ったのではなく、自社に有利なルール形成を働きかけたと批判した。
こうした見方の背景には、EUの暗号資産市場規則「MiCA」の施行がある。イグナスは、Circleの政策責任者ダンテ・ディスパルテが2022年からMiCAを「暗号資産業界のGDPR」と位置付け、制度化を後押ししてきたと指摘した。
さらに、Circleがシュテファン・ベルガーとともに「Navigating MiCA」と題したセッションを開催し、MiCA施行時点で主要10社のステーブルコイン発行体の中で、実質的に唯一ライセンスを取得していたとも主張している。
一方、欧州発のステーブルコインとして挙げられるKivallies、EURe、EURI、EURAなどは、資金力や採用を後押しするインセンティブの不足から、規模拡大に至っていないという。イグナスによれば、Circleはフランスの電子マネー機関(EMI)ライセンスを足場に欧州市場でシェアを確保し、競争が限られる中で過去12カ月に17%から60%へ引き上げた。
この動きは、欧州中央銀行(ECB)が進めるデジタルユーロ構想を巡る議論とも重なる。ECBは2029年までの導入を目指しているが、1ウォレット当たり3000ユーロの保有上限案が議論されているという。
イグナスは、こうした設計が普及の足かせになる可能性があるとみる。民間ステーブルコインが先にネットワーク効果を固めれば、公的デジタル通貨の入り込む余地は一段と狭まるとの見方だ。
次の焦点として浮上しているのが英国市場だ。イグナスは、Circleが英国でも同様のアプローチを取っているとし、ダンテ・ディスパルテが最近、英国上院でMiCAとGENIUS法を組み合わせた形の法案を後押ししていると述べた。
セキュリティ対応を巡る批判もくすぶる。Circleは最近、Solana基盤のDrift Protocolで起きたハッキングを受け、不正資金への対応の速さを巡って議論の的になったという。被害額は2億8500万ドルで、このうち7100万ドルがUSDCに移されたとされる。
オンチェーン調査を手掛けるZachXBTは、Circleが不審アドレスをより早期に凍結できたのではないかと問題提起した。過去数年で同様の事例は15件あり、被害総額は4億2000万ドルに達するとしている。
PeckShieldも、ハッカーが残る盗難資産の相当部分をUSDCに換えたと伝えた。さらに、Circleのクロスチェーン送金プロトコル「CCTP」を使い、Driftのハッキング後に約2億3200万ドル相当のUSDCをSolanaからEthereumへ移したと明らかにした。
Circleの欧州市場での拡大は、単なるシェア争いにとどまらず、規制対応、ネットワーク効果、不正送金への管理責任を含む論点へ広がっている。欧州の既存プロジェクトが規模の壁を越えられない中、Circleが英国でも影響力を広げられるかが次の注目点となりそうだ。