Apple Vision Proの開発に携わった技術者2人が、小型AIウェアラブル端末「Button」を公開した。物理ボタンを押したときだけAIが作動する設計を採用し、常時リスニング型デバイスに付きまとうプライバシー懸念の軽減を打ち出す。一方で、市場ではスマートフォンとは別に持つ専用端末としての存在意義に疑問も出ている。
4月9日(現地時間)、9to5Macによると、Buttonを開発したのはクリス・ノレット氏とライアン・バーグワイン氏。両氏はApple Vision Proの開発経験を踏まえ、物理ボタン操作でAI機能を呼び出す単体デバイスを披露した。
Buttonは、ユーザーがボタンを押したときにのみ作動する。周囲の音声を常時取得する既存のAIウェアラブルとは異なり、継続的な音声収集を避けられる点を差別化要素としている。
ただ、関心は機能そのものより、なぜスマートフォンとは別の専用端末として提供するのかという点に集まっている。同等の機能はスマートフォンアプリでも実現できるとの見方がある中、専用ハードとして投入する理由が十分に示されていないとの指摘が出ている。多くのユーザーが常にスマートフォンを持ち歩く状況では、別デバイスを携行する意味が見えにくいというわけだ。
こうした見方は、AIウェアラブル市場で先行した製品への厳しい評価とも重なる。Humane AI PinやRabbit R1は発売後、期待を下回る評価を受け、AI専用端末そのものの必要性に疑問を残した。米著名レビューユーチューバーのマルケス・ブラウンリー氏が、AI Pinを「最悪の製品」と評した例もある。
Buttonは、常時リスニングではなくユーザーが必要なときだけ起動する方式を採用し、プライバシー問題には一定の解を示した。ただ、独立したデバイスとしてどこまで明確な価値を示せるか、つまりスマートフォンと切り分けて使うだけの利便性を提示できるかについては、なお説得力を欠くとの見方が強い。
Buttonの登場は、AIウェアラブルが抱える2つの課題を改めて浮き彫りにした。個人情報保護と、専用ハードの必要性だ。前者には一部の答えを示した一方、後者は依然として解決されていない。AI専用端末がスマートフォンに続く新たなデバイス群として定着するには、形状の違いだけでなく、利用体験を分ける必然性を示す必要があるとみられる。