SpaceXが米証券取引委員会(SEC)に新規株式公開(IPO)に向けた証券届出書(S-1)を非公開で提出したと報じられ、市場の注目が集まっている。個人投資家向けの配分案が浮上する一方、極めて高いバリュエーションやxAIの財務負担を警戒する声もあり、投資家の見方は分かれている。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanは3日(現地時間)、Bloombergの報道を引用し、SpaceXが2026年半ばの上場を目指し、企業価値は1兆7500億ドル超(約262兆5000億円)を視野に入れていると伝えた。
市場では、今回のIPOで750億ドル超(約11兆2500億円)を調達する可能性も取り沙汰されている。実現すれば、2019年のSaudi Aramcoを上回る史上最大規模のIPOとなる可能性がある。Cryptopolitanは、米IPO市場でも過去10年でこれを超える資金調達は2年しかなかったとし、市場全体の資金フローに影響を及ぼす大型案件になり得ると分析した。
注目されているのは、SpaceXに対する市場の見方が変わっている点だ。単なるロケット打ち上げ企業ではなく、通信・インフラ企業として評価する見方が強まっている。衛星インターネットサービス「Starlink」は70カ国以上で約920万人の利用者を抱え、家庭向けブロードバンドに加え、政府契約や航空向けサービスにも事業を広げている。メディアは、1兆ドルを超える評価はもはやロケット企業という枠組みだけでは説明できないと指摘した。
業績面でも期待材料がある。Morningstarのデータによると、SpaceXの2025年の売上高は約160億ドル(約2兆4000億円)、EBITDA(利払い・税引き・減価償却前利益)は約75億ドル(約1兆1250億円)と推定されている。特にStarlink部門は、売上高が100億ドル超(約1兆5000億円)、利益が80億ドル超(約1兆2000億円)に達したと伝えられた。ただ、未上場企業のため実際の財務内容はなお不透明で、S-1公開後の開示内容が投資判断の重要な材料になる。
追加の成長期待を支える材料として、xAIの買収観測にも言及があった。大規模言語モデル「Grok」をStarlinkのハードウェアと組み合わせることで、SpaceXの事業モデルが打ち上げサービス中心から、クラウドとAIを含むインフラ企業へ広がる可能性があるとの見方だ。
もっとも、投資家心理は一様ではない。Cryptopolitanが3月に実施した調査では、31.1%が「すぐに買いたい」と回答し、26.4%が「過熱感が落ち着いてから参加したい」と答えた。合計57.5%が前向きな姿勢を示した一方、23.6%は高すぎるバリュエーションを理由に慎重姿勢を示した。同メディアは、SpaceXの企業価値が2025年売上高ベースで約113倍と評価される可能性があるとし、この水準のマルチプルではわずかなつまずきも許されにくいと指摘した。
今後の焦点の一つは、S-1公開とあわせて、個人投資家に公募株の約30%を配分する案が浮上していることだ。一方で、xAIの財務状況も無視できない。一部報道では、xAIはなおキャッシュフローがマイナスで、投資家はStarlinkだけでなくAI事業に伴うリスクも同時に引き受ける可能性があるとされた。
S&P 500への採用可否も注目材料となっている。4四半期連続の黒字という採用要件をいつ満たすかがなお見通しにくく、指数採用まではパッシブ資金の流入が限られるとの見方も出ている。
市場では、今回のIPOは単なる上場案件にとどまらず、宇宙・通信・AIインフラをまたぐ巨大企業としてSpaceXがどこまで評価されるかを占う案件になるとみられている。