ロシアの統一航空機製造会社(UAC)が、人工知能(AI)を活用した新型航空機の設計実験を進めている。西側の技術制裁で航空機開発に必要なソフトウェアの調達が難しくなるなか、国産AIと国産設計ソフトを組み合わせ、開発基盤の内製化を急ぐ。
TechRadarが28日(現地時間)に報じたところによると、UACはSberbankが開発したLLM「GigaChat」を使い、新型航空機の初期設計を試験している。
GigaChatは、機体形状や設計案の検討に活用している。詳細設計に入る前の段階で複数案を素早く比較し、開発効率を高めるのが狙いだ。将来的には構造強度や空力計算への適用も視野に入れるが、現時点では初期設計段階での実証にとどまっている。
UACの総合設計者セルゲイ・コロトコフ氏は、「AIは、実際の工学的課題の解決に役立つ場合に導入すべきだ」と述べた。既存の設計手法を全面的に置き換えるのではなく、エンジニアの分析や判断を支援する役割を担わせる考えだ。
今回の取り組みは、ロシア航空業界で進む国産ソフトへの転換とも連動している。2022年のウクライナ侵攻後、Dassault SystemesやSiemens、Autodeskなどの西側企業がロシア事業から撤退し、航空機開発に必要な設計環境の維持が難しくなった。UACは約4000台のエンジニアリング用コンピュータにロシア製設計ソフトを導入し、航空機開発情報を管理する9つの中核モジュールも置き換えた。
Sberbankと連携し、ロシア製設計プラットフォーム「T-FLEX」にAIを組み込んだ点も特徴だ。UACによれば、航空機の翼内部にある補強構造の設計速度は従来比で最大11倍に高まったという。ただ、その効果は外部で確認されていない。
UACは、スホーイSu-57、Su-35戦闘機やMC-21旅客機などを生産している。一方で、今回のAI実験が特定の戦闘機開発と結び付くのかは明らかにしていない。米国のF-22に対抗する新型戦闘機の具体的な開発計画も確認されていない。
もっとも、ロシアの航空機開発は順調とは言い切れない。西側部品の国産化を進める過程で、開発の遅れも表面化している。ウラジーミル・プーチン大統領は6月、MC-21は翼の問題で開発が約2年遅れたと認めた。ロシア政府は、国産化したMC-21の認証を2027年末までに完了させる目標を掲げている。
AI活用の拡大が、西側技術への依存をどこまで引き下げ、ロシア航空産業の開発効率を改善できるかが今後の焦点となる。