米AI企業のAnthropicが、希少疾患向け治療薬の創薬に本格参入した。創業者1人で運営されていたバイオスタートアップのMithril Medicineを買収し、AIを活用した研究開発体制で自社創薬を進めている。
Anthropicは10月28日、小児の希少筋ジストロフィー治療薬を開発するMithril Medicineを買収し、創薬を進めていると明らかにした。
Mithril Medicineは7月に買収された。創業者のコディ・トランバーガー氏が唯一の常勤メンバーで、AnthropicのAIモデル「Claude」を使い、外部研究機関11カ所との契約管理、実験スケジュールの調整、物流、データ分析などを担っていたという。
この手法により、Mithril Medicineは18カ月未満で創薬候補を動物実験段階まで進めた。対象は「LAMA2関連先天性筋ジストロフィー」と「アルファ・ジストログリカノパチー」で、いずれも筋機能に深刻な障害をもたらす希少疾患だ。
研究チームは、筋線維と周辺組織をつなぐ機能の回復を目指し、2種類のタンパク質に同時に結合する二重特異性抗体を開発した。
LAMA2関連疾患のマウスに試作抗体を6週間投与したところ、一部の実験群では握力と筋力が対照群のおよそ2倍に改善した。生存率も向上したが、正常マウスの水準には達しなかった。
その後の検証でもClaudeを活用した。研究チームは、候補抗体113種類に関する341ページ分の製造データをAIで分析し、Claudeは8分足らずで試験対象や追加精製が必要な候補を分類したという。
一方で、誤りも確認された。Claudeが作成したメールには抗体数量などの記載ミスがあり、少なくとも3件は人手で確認した後に外部研究機関へ送られた。
Anthropicは今回の取り組みを、「1人創薬パイプライン」モデルの初の事例と位置付ける。トランバーガー氏は買収後も研究を続けており、新たな希少疾患治療薬の開発準備を進めている。
同社は、候補物質の検証が順調に進めば、早ければ2028年下期にもヒトでの臨床試験に入れるとの見通しを示した。ただ、現時点の成果は初期の動物実験段階にとどまり、ヒトでの安全性や有効性はまだ確認されていない。