SK Telecom(SKT)が昨年発生したSIM情報流出事故後、大規模な情報保護投資と顧客保護策を通じて、信頼を一定程度回復したとの見方が示された。一方で、無料SIM交換の初期段階で生じた混乱や説明不足は、今後の課題として残った。
韓国メディア経営学会が28日に開いた討論会「企業の経営危機と対応原則」では、シン・ミンス氏(漢陽大学教授)が「企業の信頼をどう回復するか」をテーマに、SKTの事故後対応を分析した。
シン氏は、SKTの対応のうち、とりわけ新規加入の停止と違約金免除を高く評価した。収益への影響を受け入れてでも既存顧客の保護を優先した判断だったためだ。
昨年の事故では、電話番号や加入者識別番号(IMSI)を含む25種類のSIM関連情報、計9.82GBが外部に流出した。IMSIベースの被害規模は約2696万件に達した。
SKTは事故後の顧客保護策として、無料SIM交換、SIM保護サービスの拡大、新規加入停止を実施した。これに加え、違約金免除をはじめとする顧客補償プログラムなど、金銭面の支援策も打ち出した。
シン氏は、新規加入停止と違約金免除について「費用負担を会社側が引き受けた点は、SKTの対応として評価できる」と指摘。「顧客優先という価値をスローガンにとどめず、損益に影響する経営判断として示した事例だ」と述べた。
また、デジタル弱者を対象にした訪問型SIM交換サービスについても、海外でも例の少ない信頼回復策だと評価した。店舗への来店が難しい利用者を直接訪問することで、保護が行き届きにくい層をカバーしたとしている。
シン氏は「信頼は平均的な顧客ではなく、最も脆弱な顧客が実際に守られているかどうかで判断される」と語った。
その一方で、顧客保護を目的に始めた無料SIM交換が、結果として不満を広げた面もあったと指摘した。交換開始当初は在庫不足が生じ、SKT店舗の前に長い行列ができたという。
シン氏は当時を振り返り、「企業と消費者の双方にとって不本意な状況だった」と述べた。事前の在庫確保や予約体制、店舗の処理能力の見極めが不十分で、利用者の不便と現場職員の負担を増やしたとしている。
さらに、SKTが今後5年間で7000億ウォンを投じる情報保護投資と、5000億ウォン規模の顧客補償プログラムを打ち出し、セキュリティ体制の改編と外部検証を進めている点にも意義があるとした。
情報保護白書の発刊や、顧客信頼委員会、顧客諮問団の運営についても、事故後対応を中長期的な顧客体験改善につなげる取り組みとして位置付けた。
ただ、長期間にわたるハッキングの試行を防げなかったセキュリティ上の不備、初動段階での説明不足、SIM交換時の混乱などは、なお解決すべき課題だと指摘した。法的責任を巡る争いも続いている。
SKTは、個人情報保護委員会が科した1348億ウォンの課徴金を不服として、処分取り消し訴訟を起こしている。シン氏は、自主的な保護措置の履行や顧客の実質的被害が確認されていない点、課徴金算定の衡平性などを踏まえると、同社側に処分を争う余地があるとの見方を示した。
同日の討論会では、アン・ジョンミン氏(翰林大学教授)も発表し、技術的な障害の復旧と顧客の信頼回復は分けて考えるべきだと強調した。「技術的原因が解消されても、顧客被害や不信感は残り得る」とした上で、事故原因と被害拡大の経路を区別し、顧客や協力会社への影響まで危機管理の範囲に含めるべきだと提言した。
シン氏によると、SKTの月平均解約率は事故直後の昨年4〜6月期に1.6%まで上昇したが、今年4〜6月期には事故前の水準に近い0.8%まで低下した。事故前の昨年1〜3月期は0.7%だった。シン氏は、こうした推移を踏まえ「SKTの措置は消費者の信頼回復に効果があったとみられる」と評価した。
SKTは今年、国家顧客満足度(NCSI)、韓国サービス品質指数(KS-SQI)、韓国産業の顧客満足度(KCSI)など主要な顧客満足度調査で1位を記録した。
イ・ヘヨン氏(SKT顧客価値革新室長)は「信頼は、継続的な努力を通じて顧客の心を動かしてこそ築ける」とコメント。「顧客の声をよりきめ細かく把握し、顧客体験の改善につなげていく」と述べた。