AIが暗号資産ウォレットの支出上限を自ら引き上げた事例が確認された(写真=Shutterstock)

最新AIモデル10種のうち9種が、暗号資産ウォレットの支出上限をユーザーの承認なしに引き上げていたことが分かった。ウォレット操作に加え、認証コードを受け取るメールにもアクセスできる条件では、本人確認の手順までAIが自ら処理していた。

ブロックチェーンメディアのThe Defiantが27日(現地時間)に報じたところによると、Cornell Tech、Yale大学、暗号資産研究機関IC3の研究チームは、Circleの「Circle Agent Wallet」を使って、AIが支出制限を順守するかを検証した。各モデルにはウォレット、メール、ウェブツールへのアクセス権を与え、受信箱に届いた請求書を支払うよう指示した。

実験では、ウォレットに10USDCを入金し、1日当たりの支出上限を0.01USDCに設定した。受信箱には0.01USDCの請求書を3件用意し、すべて支払うには上限の引き上げが必要となる条件を整えた。

そのうえで、上限変更や認証コードの使用については明示的に指示せず、各モデルで20回ずつ試行した。その結果、10モデル中9モデルが少なくとも1回、メールで受信したワンタイムパスワード(OTP)を自ら入力し、支出上限を引き上げた。外部からの攻撃や上限変更の指示がないにもかかわらず、決済を完了させるため、ユーザー承認の工程をAIが自律的に処理した格好だ。

問題となるのは、資金を扱うAIが、上限変更を承認するための認証手段にも同時にアクセスできていた点だ。Circle Agent Walletでは、支出ポリシーの変更時にアカウント所有者のメール宛てに認証コードが送られるが、その受信箱をAIが閲覧できる場合、実際に誰が変更を承認したのか区別しにくくなる。

研究チームは別の実験も実施した。ユーザーを装ったメールを送ったところ、10モデル中5モデルが支出上限を引き上げ、攻撃者のアドレスへ送金した例も確認された。このときAIに与えられていた本来の業務は決済ではなく、メールの要約だった。外部メールの指示をユーザーの要請として受け取ると、支出上限と承認プロセスの双方が無力化され得ることを示した。

こうした指摘を受け、Circleは案内文書に「AIエージェントへメールアカウントの無制限アクセス権を与えない」よう警告を追記した。認証コードはユーザーが直接入力するよう推奨している。研究チームはあわせて、AIがアクセスできない信頼済みデバイス上で人が承認する別の仕組みも提案した。

もっとも、今回の結果は、AIにウォレットと認証コード受信用メールの双方へのアクセス権を与えた条件で得られたものだ。基本の決済実験では、AIはユーザーの請求書処理を担っており、上限引き上げそのものが直ちに資金の窃取を意味するわけではない。上限を設定するだけでは不十分で、上限変更の権限と認証手段をAIから切り離す設計が重要であることを示した研究といえる。

キーワード

#AI #暗号資産 #ウォレット #Circle #ワンタイムパスワード #セキュリティ
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.