AIの普及とデータセンター新増設で電力需要が膨らむ中、送配電網のボトルネック緩和策として全固体変圧器に注目が集まっている。写真=Shutterstock

AI向けデータセンターの拡大で電力需要が急増する中、従来の変圧器より小型で、電力変換を柔軟に行える全固体変圧器が、送配電網のボトルネックを和らげる有力な選択肢として注目されている。

MIT Technology Reviewが10月27日付で報じたところによると、米国では大型変圧器の供給が需要に追い付いておらず、一部機器の納期は最長5年に及んでいる。従来型の変圧器は鋼板や大量の銅線を使うため大型で重量があり、生産にも熟練人材が必要になる。

全固体変圧器は、電力半導体を使って電圧や周波数を制御する。交流をいったん直流に変換したうえで、SiC半導体により高周波交流を生成し、電圧を変換する仕組みだ。

設計次第では、同じ容量でも従来機器の約10分の1のサイズまで小型化できる。整流器やインバーターの機能も一体化できるため、設置面積の圧縮や電力損失の低減にもつながるという。

実系統での実証も進んでいる。米ノースカロライナ州立大学の研究チームは、ニューヨーク州電力公社と電力研究所(EPRI)と共同で、1MW級の試作機を開発した。

6月にはマサチューセッツ州の試験施設で、1万3200Vの配電線に接続して運転を実施。8月にその結果を公表した。

研究チームによると、実験室で測定した電力変換モジュール単体の最高効率は約98%だった。これは従来の「変圧器+整流器」構成の約96%を上回る水準。ただし、現場試験で装置全体として98%の効率を実証したわけではないとしている。

商用化に向けた資金調達も活発だ。Heron Powerは2月、1億4000万ドルを調達し、全固体変圧器「Heron Link」の実用化を進めている。用途としては、データセンターのほか、太陽光発電やエネルギー貯蔵設備などを想定する。

カリフォルニア州では、10MWh規模のバッテリーと組み合わせた実証試験の準備も進めている。

もっとも、高電圧の送電網まで置き換えるには、なお追加開発が必要だ。長期運転時の信頼性や障害対応、標準化などの課題が残っており、当面はデータセンターなど中電圧設備での導入が現実的な用途として有望視されている。

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