TeslaはEV販売でBYDに首位を譲る中、自動運転ソフトを新たな成長の柱に据える。月額課金型の「Full Self-Driving(FSD)」とAIサービスを軸に、車両販売依存から継続課金収入型への転換を進める構えだ。
Ars Technicaが26日付で報じた。Teslaはサブスクリプション型ソフトとAIサービスの拡大を通じて収益基盤の多角化を目指しており、SpaceXとの合併観測も含め、自動運転分野での競争力強化が焦点になっている。
自動車業界では、車両販売に加えてソフトウエアとAIサービスを新たな収益源とする動きが広がっている。Yorkville Ivesのテックアナリスト兼パートナー、ダン・アイブス氏は、ソフト事業の高い採算性に注目する。Teslaも、売上高の約75%を占める自動車事業の収益をAI投資の原資に充てている。
中国勢がEV市場で存在感を高め、ソフトとAIへの投資も積み増す中、Teslaを取り巻く競争環境は大きく変わった。イーロン・マスク氏がかつて掲げた2030年の年間販売目標2000万台は、500万台へ引き下げられた。前年の納車台数が160万台だったことを踏まえると、なお高い目標といえる。
短期的な成長のけん引役と位置付けられているのがFSDだ。マスク氏は直近の決算説明会で、FSDが需要を左右する主因になっていると説明し、市販車では実質的な競合がないとの認識を示した。ただ、現行の監視付きFSDは、運転者が着座した上で周囲の状況を継続的に監視する必要がある。
北米で販売されたTeslaの新車では、監視付きFSDの選択率が75%を超えた。世界のアクティブ契約件数は170万件と、前年から67%増えた。米国での利用料は月額99ドル(約1万4850円)。TeslaはFSDの継続課金収入の規模を公表していないが、アイブス氏は加入率が現在の10〜15%程度から顧客全体の50%前後まで高まれば、同社の収益構造を大きく変える可能性があるとみている。
今後のカギを握るのは規制当局の承認だ。Teslaは、運転者の監視を必要としない完全自動運転版について、まだどの市場でも認可を得ていない。監視付きFSDはオランダなど欧州の一部の国で認められているものの、EU全域への拡大に向けた加盟国投票は12月に延期された。
競合も承認獲得を急ぐ。Volkswagenの支援を受けるXpengは、自社システム「XNGP」の欧州承認を進めている。Xpengの法務責任者、ジョン・イエチン氏は、関連ルールの整備が進めば、承認を得る最初の企業群の一角に入りたいとの考えを示した。
一方、SpaceXとの合併が実現した場合、TeslaはAI、素材、製造分野の研究開発を一体化し、半導体など主要部品へのアクセスを強める可能性がある。ただ、合併によってマスク氏の支配力が一段と強まり、AI事業のリスクがグループ全体に波及するとの懸念もある。William Blairのアナリスト、ジェド・ドルスハイマー氏は、株主と規制当局の承認が前提としつつも、統合後の新会社でマスク氏の持ち分に基づく支配力が50%を超える可能性があると分析した。
Teslaの戦略は、既存の完成車メーカーにも影響を及ぼしている。General Motors(GM)はTesla出身のスターリング・アンダーソン氏を迎え、自動運転車の開発を任せた。BMWとメルセデス・ベンツは、QualcommとNVIDIAの協力を得て、運転者の継続監視を前提とする「レベル2プラス」の運転支援システムを開発している。Volvo Carsのホーカン・サミュエルソンCEOも、Teslaが西側諸国における自動運転技術開発を主導していると評価した。
自動車業界の競争軸は、単なる販売台数から、自動運転技術とサブスクリプション型ソフトの収益力へと広がっている。TeslaがFSDの普及拡大と規制承認、さらにSpaceXとの連携を通じて、EV市場で失った主導権を取り戻せるかが注目される。