Verizonのダン・シュルマン最高経営責任者(CEO)は、SpaceXのStarlinkが米移動通信市場でVerizonなど既存大手と本格的に競争するには、最大5000億ドルの投資と最長8年が必要になる可能性があるとの見方を示した。
Business Insiderが10月26日(現地時間)に報じた。シュルマン氏は決算説明会のカンファレンスコールで、Starlinkの競争力を過小評価する考えはないとしつつ、有力な競争相手になるまでには技術面、財務面のハードルが大きいと述べた。
同氏はSpaceXの実行力を高く評価した上で、「技術と無線通信を巡る市場環境は急速に変化しており、当社もそれに合わせて素早く進化しなければならない」と説明した。さらに、SpaceXについて「表明したことを実行してきた企業だという前提で見ている」と語った。
一方で、Verizonは、Starlinkが本格参入するには衛星サービスだけでは不十分だとみている。シュルマン氏は、SpaceXが地上ネットワークを構築すれば、「最終的には他社のネットワークと同様の構成と性能に近づく」と指摘し、「この可能性は極めて真剣に受け止める必要がある」と述べた。
その上で、衛星ベースのサービスだけでは、郊外や都市部で地上ネットワークと競争するのは難しいとの認識も示した。「当社売上高の約98%を占める郊外・都市部では、Starlinkのサービスは地上網と競争できない」とし、「当社の方が100〜1000倍高効率だ」と主張した。
米国で競争力のある移動通信網を構築するには、大規模な地上インフラが不可欠だとも説明した。最大8万局の大型の基地局を設置し、それらを衛星と光ファイバー網で接続する必要があるとの試算を示した。
所要期間については、事業全体で6〜8年、実際のネットワーク構築だけでも最低4〜6年かかるとの見方を示した。
コスト負担も大きい。シュルマン氏は、事業費が最大5000億ドルに達する可能性があると推計。加えて、顧客対応やバックオフィスシステムなど、運用体制の整備も必要になるとした。
その上で、「こうした投資を終えたとしても、最終的には現在当社が保有しているのと同様のネットワーク、能力、コスト構造に行き着くことになる」と述べた。
Starlinkの周波数確保を巡る報道は、通信業界の株価にも影響を与えた。今月初め、Starlinkがモバイルサービスに適した低帯域周波数を確保したとの報道を受け、米主要移動通信各社の株価は約10%下落。その後、Verizonだけが下落分の一部を戻したという。
シュルマン氏の発言は、AT&Tのジョン・スタンキーCEOによる最近のコメントとも方向性が近い。スタンキー氏は、Starlinkのモバイルネットワークが事業上の脅威になり得るとの懸念について、「低帯域周波数を確保した1事業者に過度に反応する必要はない」と述べていた。
米通信業界は、Starlinkを長期的な競争相手となり得る存在として警戒する一方、既存の地上ネットワークに対抗できる水準に達するには、巨額の資本投下と長い整備期間が必要だとみている。