Deutsche Bankは、一部の企業融資審査にAIを導入し、従来は数週間を要していた処理を数分に短縮した。今夏から新システムの運用を始めており、とくに企業構造が比較的単純な小規模企業向けで効果が大きい。
Cryptopolitanの報道によると、同行は新たなAIシステムを今夏から稼働している。審査に必要な情報の分析を迅速化し、融資判断にかかる時間を大幅に縮めた。
最高技術責任者(CTO)のマリザン・ドベールダン氏は、AIが審査に必要な情報を素早く分析することで、処理時間の短縮につながったと説明した。従来は多国籍企業の案件で審査結果の提示まで数カ月かかる場合もあったが、現在は数週間で回答できるようになったという。
最高経営責任者(CEO)のクリスティアン・ゼービング氏は、Deutsche BankをAIを中核とする銀行へ転換する構想を示している。その基盤となるのが、社内プラットフォーム「ADA」だ。
コンピューティングの先駆者、エイダ・ラブレスにちなむADAは、AIエージェントの開発や監視、管理・統制を支援する。セキュリティリスクの管理や、複数のAIモデルの切り替えにも対応する。
同行は、銀行側のAIシステムを顧客のパーソナルアシスタント型AIと接続する構想も検討している。銀行業務の一部を、人を介した応対からAIエージェント同士のやり取りへ広げる考えだ。
ドベールダン氏は、将来的に顧客側のエージェントと銀行側のエージェントがやり取りする環境を見据えているとし、その際の説明責任や統制の仕組みを明確にしたいとの考えを示した。
競合する大手行でもAI活用は広がっている。英国のBarclaysはAI導入を進める一方で、約5000人の人員削減を進めた。Citiは、技術導入によって製品開発のスピードが40%向上し、コスト削減にもつながったと明らかにしている。
一方、Deutsche BankのAI転換には、老朽化した技術基盤の刷新という課題も残る。2015年には当時の経営陣が、分散し、互換性を欠くレガシーシステムを問題として指摘していた。
ロシアによるウクライナ侵攻後には、ロシアにいた技術人材の移転を進める必要にも迫られた。
Deutsche Bankは、AIによる融資審査の効率化を進めると同時に、社内基盤のADAを通じて活用範囲を広げている。今後、顧客側AIとの連携構想を具体化するうえでは、セキュリティ統制とリスク管理体制の整備が引き続き課題となりそうだ。