米国株の上昇相場が、大型IPO(新規株式公開)や増資の増加で揺らぐ可能性がある。CNBCが26日(現地時間)に報じたところによると、ジム・クレイマー氏は、新株供給の急増が市場の需給を悪化させ、株高の重荷になりかねないとの見方を示した。
発言のきっかけとなったのは、Anthropicが26日にIPOの申請書類を提出したことだ。対話型AI「Claude」を手がけるAnthropicは、ウォール街で有力なAI関連上場候補として注目されてきた。
市場ではOpenAIと並んでAnthropicの上場を待望する声が強い。一方、クレイマー氏は、こうした期待とは別に、大型AI企業の資金需要が市場全体の需給に新たな負担をかける可能性があると指摘した。
同氏は、今年のIPOによる資金調達額が1480億ドルに達していることに触れ、新規株式の供給が投資需要を上回るリスクを懸念した。政治要因や金利動向も相場の重しになり得るとしつつ、足元の市場を最も直接的に揺さぶりかねない要因としてIPOの急増を挙げた。
クレイマー氏は、株式供給の増加が続けば相場は徐々に弱含む可能性があると説明した。
もっとも、こうした懸念はAI業界そのものに否定的な見方を示したものではないとも強調した。2000年のドットコム・バブル期に崩壊した投機的なインターネット新興企業とは異なり、現在の主要テック企業は実体のある事業基盤と実需を備えているとの見方を示した。
その上で、「今回は企業が本物で、収益力の高い企業も多い。これまでも彼らを信じてきたし、今後もそうだ」と語った。
クレイマー氏によれば、ドットコム・バブル期との共通点は企業の質ではなく、資金調達の規模にある。当時も大規模な株式発行が相次ぎ、投資家の資金が追いつかず、供給が需要を上回ったことが相場崩壊につながったという。
同氏は、現在も同様の流れが再現される可能性があるとみている。
さらに、MetaやAlphabet、SpaceX、Oracleといった大型企業までが資本市場で大規模な資金調達に動けば、状況は一段と複雑になると指摘した。これら企業が市場から資金を吸収すれば、本来はS&P500種株価指数の構成銘柄や他の株式に向かうはずだった投資マネーが分散しかねないためだ。
企業業績や事業基盤が強固であっても、市場全体では資金配分の変化を通じて幅広い銘柄に圧力が及ぶ可能性があるとの見方も示した。
また、債券市場と株式市場の双方についても警戒感を示し、「両市場で資金余力が細ってきている」と述べた。
企業が成長戦略のために必要な資金を調達しようとしても、投資家が成果を見極める前に、市場の受け皿が先に弱まる可能性があるというわけだ。
ただ、これが直ちに相場の天井を意味するわけではないとも付け加えた。クレイマー氏は「市場の天井を言っているのではない。ただ、今見えている流れは好ましくない」と話した。
Anthropicの上場準備は、AI企業による公開市場への参入が本格化する兆しと受け止められている。上場期待が高まる一方で、大型案件の相次ぐ登場が市場全体の需給にどのような影響を与えるのかが、当面の注目点となりそうだ。