米国のデータセンター事業者が、人工知能(AI)インフラの拡大に必要な電力を確保する手段として、燃料電池の導入を増やしている。送電網への接続に数年単位の時間を要するケースがあるため、敷地内に自家発電設備を設けて稼働開始を前倒しする動きが広がっている。関連投資は2030年に300億ドル(約4兆5000億円)規模に達するとの見方も出ている。
Bloombergが10月23日(現地時間)に報じたところによると、エネルギー調査会社Rystad Energyは、データセンター向け燃料電池投資が2025年の28億ドル(約4200億円)から、2030年には約300億ドル(約4兆5000億円)に拡大すると予測した。米国では、大規模な電力需要を送電網に接続するまでに3〜6年かかる可能性があると試算している。
AIデータセンターは、演算装置や冷却設備を24時間稼働させる必要があり、大量かつ安定した電力供給が欠かせない。燃料電池は天然ガスや水素などの化学エネルギーを電力に変換する設備で、現場で直接発電できる点が強みとされる。
需要拡大の追い風を受けるBloom Energyは、第3四半期の売上高が前年同期比138%増の12億4000万ドル(約1860億円)だった。純利益は2億5030万ドル(約375億円)で、前年同期の2310万ドル(約35億円)の純損失から黒字転換した。通期の売上高見通しも44億〜46億ドル(約6600億〜6900億円)に引き上げた。
Bloom Energyの最高経営責任者(CEO)ケイアール・スリダール氏は、Oracleとの初の案件公表後、ユタ州の用地で2カ月足らずで電力供給を始めたと明らかにした。ニュージャージー州のネビウス・プロジェクトでも、契約締結から3カ月以内に燃料電池設備に必要な許認可を取得したと説明した。
Oracleは、Bloom Energyの燃料電池システムを最大2.8ギガワット(GW)分調達する計画で、このうち1.2GW分はすでに契約済みだ。Rystad Energyは、OracleのほかAEP、Equinix、Brookfieldなどを含む業界全体の受注残を約9GWと見積もる。一方で、フレームワーク契約は総容量すべての確定発注を意味するものではないとも指摘した。
競合のFuelCell Energyも、データセンター向け事業の拡大を進めている。CEOのジェイソン・フュー氏は、重要なのは電力コストだけでなく、供給開始までに要する時間だと述べた。同社は今後2〜3年で、データセンターおよび関連事業が売上全体の75〜85%を占めると見込む。現在の比率は25〜30%としている。
一方で、市場拡大には供給面の制約も残る。Rystad Energyは、燃料電池の年間生産能力が現在の約1.8GWから2030年には4GWへ拡大すると予測する。ただ、大規模案件は装置供給だけでなく、用地整備、許認可、ガス接続、電力設備の構築といった要素にも左右される。
燃料電池は送電網を全面的に代替するというより、系統電力を補完し、データセンターの立ち上げを早める手段として活用される見通しだ。市場拡大のペースは、供給企業が競争力のあるコストで装置を納期通りに供給できるか、開発事業者がプロジェクトを進めながら燃料を安定的に確保できるかに左右されそうだ。