ASMLの次世代露光装置「High-NA EUV」の量産導入をにらんで、フォトマスク業界で技術開発と生産体制整備が本格化している。DRAMメーカーやファウンドリー各社の導入計画が具体化するなか、マスクメーカーも対応技術の確立や生産能力の拡充を相次いで打ち出している。EUVマスク材料では日本企業が実質的な供給優位を築いてきたが、韓国企業もペリクルやブランクマスクで認証取得を進め、市場参入を狙う。
業界関係者によると、High-NA EUVの量産導入は2028年から順次始まる見通しだ。オランダの半導体メディアBits&Chipsは、Samsung Electronicsを含むDRAMメーカーが2028年からHigh-NA EUVの本格的な立ち上げに入ると報じた。
High-NA EUVは、レンズの開口数を高めることで、より微細な回路をウエハー上に形成できる露光装置だ。従来装置では1回で描画しにくかった微細パターンも、High-NA EUVでは単一露光で対応しやすくなるとされる。
メモリメーカーにとっては、セルの高密度化による集積度向上に加え、工程数の削減も導入効果となる。最先端のロジックおよびDRAM量産では現在も従来型EUVが主力だが、グローバルDRAM各社ではHigh-NA EUVの導入時期が見え始めた。SK証券は、Samsung ElectronicsのP5、SK hynixのY1など韓国の新設DRAM工場向け装置投資が来年から本格化するとみている。
ロジック各社も導入日程を固めつつある。Intelは技術リーダーシップの回復を掲げ、初期導入に伴うコストとリスクを引き受ける形で、TSMCに先行して量産に踏み切る方針だ。一方、装置価格の高さに繰り返し懸念を示してきたTSMCは、2030年の量産開始を計画している。
SK証券によれば、NVIDIAの次世代GPU「Rubin」はダイ単体の面積が約858平方ミリメートルに達し、単一露光の限界に近づいている。大面積チップを扱うロジック企業は、チップを分割露光して接合する負担を抱えつつも、High-NA EUVの導入を進める構図だ。Samsung Electronicsのファウンドリー事業も、TSMCに近いスケジュールを想定している。
こうした装置導入計画の具体化を受け、焦点はマスク側の準備に移りつつある。SEMIはフォトマスクに関する報告書で、High-NA EUVの導入計画に合わせた技術・生産両面の準備が、マスクメーカーの主要課題になると指摘した。
EUVマスクの需要はすでに拡大している。SEMIは、チップメーカーが自社運営のマスク製造施設で、最先端ロジックおよびメモリ向け需要に対応するためEUVマスクの生産能力を増強していると分析した。フォトマスク市場全体に占めるEUVマスクの数量比率は、2020年の約1%から2025年には約7%へ拡大したという。
マスク材料では日本企業の優位が続く。SK証券は、EUV関連材料が現在、日本企業による実質的な独占供給構造にあると指摘する。フォトマスク原材料であるブランクマスク市場でも、QY Researchによると、2025年の売上高ベースでShin-Etsu MicroSi、HOYA、AGCの日本3社が約86%を占める見通しだ。
ブランクマスクは、基板の平坦度や微細欠陥の制御技術に加え、顧客による長期の品質認証が必要なため、新規参入のハードルが高い。EUV向けでは、光を反射する多層膜を数十層にわたって形成する必要があり、DUV向けより製造難度が高い。HOYAは2019年度第1四半期時点で、ブランクマスク売上高に占めるEUV製品の比率が29%に達しており、量産実績を積み上げてきた。
一方、韓国の材料メーカーもEUVマスク材料市場への参入を進めている。SK証券によると、FSTはカーボンナノチューブ(CNT)ベースのEUVペリクルで年内にASMLの認証取得を見込み、来年の市場参入を目指す。同社は、市場が求める透過率と高出力対応性能を備えたペリクルを確保したとしている。
2027年1〜3月期には、FSTのEUV関連インフラ装置が主要顧客の最先端ファウンドリーラインに設置される予定だ。SK証券は、CNTベースのEUVペリクル市場が主要顧客ベースで、2027年の350億ウォン(約39億円)から2028年には900億ウォン超へ拡大すると推計した。
S&S Techは、ブランクマスクを起点にEUV分野へ事業領域を広げている。同社は昨年10月、龍仁にEUV専用センターを竣工した。EUVブランクマスクについては、来年初めまでに顧客認証試験を終えることを目標に掲げる。韓国IR協議会は、龍仁センターの稼働により生産能力が従来比で約2倍に増えると見込んでいる。
EUVペリクルも9月に顧客の品質試験に入った。ただ、ブランクマスクの認証は当初、今年初めの時点で第2四半期の適用が見込まれていたものの、一度延期された。既存EUVで供給実績を確保できなければHigh-NA EUVのマスクエコシステムにも参入しにくいだけに、今回の認証日程は韓国企業の準備速度を測る試金石となりそうだ。