大企業の資金管理がブロックチェーン上へ移行するなか、銀行が共同でインフラを整備できるかが新たな焦点となっている。企業は決済の速さだけでなく、取引先の信頼性や規制対応も重視しており、非銀行系ステーブルコインより銀行系のデジタル資産を選ぶ傾向が浮かび上がった。
米American Bankerによると、現地時間5日に開かれたラウンドテーブルには、決済担当役員、企業財務担当者、市場インフラ関係者ら10人が参加した。議論では、ブロックチェーンを投機の対象ではなく、企業の資金管理を効率化するバックエンドの台帳技術とみる見方が大勢を占めた。
参加企業の一例として、税務上のメリットを得るために、グローバル企業6社の間で200万ドル(約3億円相当)を移転したケースが紹介された。従来の決済ネットワークでは完了まで6〜8日かかっていたが、ステーブルコインの活用により数分で取引を終え、改ざん耐性のある監査記録も残せたという。
参加者の多くは、今後の企業金融ではトークン化預金とステーブルコインが役割を分担する可能性が高いとみている。トークン化預金は安全性と収益性を備えた資金の保管手段、ステーブルコインは異なるネットワーク間で資金を移す際の橋渡し役を担うとの見方だ。企業間決済では、単純な処理速度よりも、スマートコントラクトによる自動化やプログラム可能性の方が大きな価値を持つと評価された。
一方で課題として挙がったのが、銀行がそれぞれ独自のクローズドな台帳を構築するケースだ。相互接続できないネットワークは利用範囲が限られ、クロスチェーンメッセージングや中央銀行の清算システムとの連携も追加で必要になる。その結果、初期投資に見合う効率を確保しにくくなる可能性がある。このため参加者からは、個別にフィンテックを買収するより、複数の銀行が資本を出し合って共同インフラを構築する案が現実的な選択肢として示された。
決済の高速化が進めば、従来の銀行が数日間の決済プロセスのなかで得ていた待機資金の収益は縮小する見通しだ。背景には、トークン化されたマネー・マーケット・ファンドが、企業の遊休資金に対してリアルタイムに近い利回り提供を始めていることがある。
また参加者は、包括的なデジタル資産関連法の整備について、政治的対立や地域銀行の懸念を背景に大幅に遅れる可能性があると指摘した。その間、銀行は為替や流動性の管理能力、規制面での信頼性といった強みを生かしつつ、相互運用性を備えたトークン化預金インフラの整備を急ぐべきだとの見方を示した。