米商品先物取引委員会(CFTC)は5日、個人向けの暗号資産レバレッジ、証拠金、貸付取引を対象とする規則策定に向け、事前通告(ANPRM)を公表した。議会で暗号資産市場構造法案「CLARITY Act」の成立が進まないなか、既存の法的権限を使って連邦レベルの制度整備を進める。
意見募集の対象は、個人投資家による証拠金、レバレッジ、貸付を伴う暗号資産取引だ。ANPRMは正式な規則案の策定前に市場参加者の意見を募る初期手続きに当たる。意見提出の期限は連邦官報への掲載後60日で、提出意見は規制ポータルで公開される。
今回のANPRMでは、大きく2つの枠組みが示された。1つは「暗号資産取引規制(CTX)」で、個人顧客が暗号資産を証拠金、レバレッジ、貸付の形で取引できる取引をCTXとして定義し、全米共通の規制体系で管理する案を検討する。
もう1つは「暗号資産市場規制(CAM)」だ。CFTCは、CTXを提供する取引所について、既存の指定契約市場(DCM)として登録するか、暗号資産取引に特化したDCMの新たな下位区分であるCAMとして登録できる仕組みを提示した。CAMは、CTXのみを扱う取引所向けの独立した市場枠組みとして設計されている。
マイケル・セリグCFTC委員長は、今回の措置について、米国の暗号資産分野の拠点としての地位を維持する取り組みの一環だと説明した。ドナルド・トランプ米大統領が、議会での立法の有無にかかわらず暗号資産市場の制度整備を進める考えを示しているとしたうえで、CFTCとして商品取引所法(CEA)に基づく既存権限を活用すると述べた。
また、委員長は、事後的な執行に偏った対応から転換する方針も強調した。FTXのような不正を未然に防ぐためのルール整備を進める考えを示している。
セリグ委員長によると、FTXの米国内のCFTC登録関連会社が保有していた顧客資産は分別管理され保護されていた一方、州の資金移動業免許を持つ別の関連会社では顧客資産を巡る問題が生じたという。
今回の制度設計では、レバレッジ提供の有無が重要な判断基準となる。現物取引のみを提供する取引所は、基本的に州の資金移動業規制のもとで現在の枠組みを維持できる。
これに対し、個人顧客向けに証拠金、レバレッジ、貸付取引を提供する取引所は、CFTC登録と連邦規制の対象となる。CFTCは一律に連邦登録を義務付けるのではなく、事業モデルに応じて州規制と連邦登録の適用関係を整理する考えだ。ただし、個人向けレバレッジ取引の提供を目指す取引所については、現行法上、CFTC登録が必要になると説明している。
CFTCはあわせて、暗号資産が顧客の外部にある非カストディアル・ウォレットに28日以内に移される場合、現物受渡しの例外に該当し得るとの解釈も示した。一方で、資産が取引所の内部台帳にとどまる仕組みでは、レバレッジ提供の有無に応じてCFTC規制の対象となる可能性があるとした。
CAMとして登録する取引所には、市場操作の防止や顧客資産保護に関する要件も課される見通しだ。CFTCは、上場資産の市場操作リスクの検証に加え、顧客資産を統合口座で保管する取引所に対して準備金証明を義務付ける案も示した。
CTX取引については、先物仲介業者(FCM)が関与して顧客口座と資金を管理し、資産分別、資本規制、マネーロンダリング対策、顧客確認義務などを適用する案も盛り込んだ。
CFTCの今回の動きは、議会でCLARITY Actの審議が進んでいないことを背景にしたものだ。同法案は、暗号資産市場に関する連邦規制の枠組みを法律で明確化し、CFTCの役割を拡大する内容だったが、上院では進展しなかったという。
このためCFTCは、議会立法を待たず、既存の法的権限に基づいて規則策定手続きに入った。ただ、現時点ではあくまで事前通告の段階であり、今後は意見募集を経て正式な規則案の公表、最終規則の策定へと進む。
米証券取引委員会(SEC)も、暗号資産を巡る規制体系の整備を進めている。CFTCとSECは3月、暗号資産取引に連邦証券法がどう適用されるかについて共同解釈を示した。これに続き、SECも暗号資産に特化した別個の規制枠組みの整備を進めている。