量子コンピュータの実用化が今後10年以内に視野に入るとの見方が、あらためて注目を集めている。背景にあるのは、誤り訂正技術や論理量子ビット実装の進展だ。こうした動きに伴い、ビットコインの暗号基盤に対する中長期的な影響にも関心が高まっている。
Bitcoin Magazineによると、量子コンピュータ分野では、物理量子ビットの拡張と同時に誤りを抑える技術の改良が進んでいる。これまで遠い将来の話とみられがちだった実用級の量子コンピュータについても、今後10年以内に実現する可能性が、従来より現実的なシナリオとして語られ始めているという。
焦点となっているのは、単純な性能競争ではなく、誤りをどこまで効率的に制御できるかだ。量子コンピュータは外部ノイズの影響を受けやすく、現状では複数の物理量子ビットを組み合わせて、より安定した論理量子ビットを構成する必要がある。
従来のサーフェスコードでは、論理量子ビット1個を実現するのに数百〜1000個近い物理量子ビットが必要になる可能性があり、これが大きな制約とされてきた。
この課題の打開策として注目されているのが、量子低密度パリティ検査(qLDPC)コードだ。離れた量子ビット間でも誤りを検出できるよう設計されており、安定した論理量子ビットの実現に必要な物理量子ビット数を大幅に削減できる可能性がある。
Bitcoin Magazineは、これをもって量子コンピュータが完成したとみなすことはできないとしつつも、大規模な量子システム構築に向けた実装効率が改善している兆候だと評価した。
Googleの実証も、関連分野の進展を示す材料として注目されている。SycamoreとWillowのチップを使い、物理量子ビット数の増加に伴って論理誤り率が低下するかを検証した。
17個、49個、101個の物理量子ビットを用いた実験では、規模が大きいほど論理誤り率が下がる傾向が確認された。
もっとも、この結果を量子コンピュータの完成と受け取るのは早計だ。今回の研究は、古典コンピュータでは不可能な計算を実行したことを示すものではなく、量子情報を一定時間にわたって安定的に保持できるかを確かめることに主眼が置かれていた。
重要なのは、論理量子ビットが、それを構成する個々の物理量子ビットよりも長くコヒーレンスを維持できる臨界点を超えた点にある。
AIも、量子コンピュータ開発を後押しする要因の一つとされる。量子アルゴリズムの開発に加え、回路設計や量子ビット配置の最適化にもAIの活用が広がっている。
ノイズや遅延を抑えるための量子ゲート配置の計算は複雑で、AIによる設計自動化が開発効率の向上につながるとの見方が出ている。
ビットコインを巡って最も注目される論点は、暗号方式に対する長期的な脅威だ。十分に強力な量子コンピュータが実現した場合、現在使われている暗号方式の一部が攻撃対象になる可能性があるためだ。
特に、ビットコインの公開鍵暗号が将来的に量子コンピュータの標的になり得るとの懸念は、以前から指摘されてきた。
ただし、現時点で量子コンピュータがビットコインの暗号基盤を破れる段階に達したことを意味するわけではない。脅威が現実化するには、大規模な論理量子ビットを安定運用しながら誤りを制御し、実際の暗号解読計算を実行できる水準に至る必要がある。
現行技術はなお、この段階とは大きな隔たりがあるとみられている。
結局のところ、論点は「ビットコインが直ちに量子コンピュータで破られるのか」ではない。むしろ、「量子コンピュータの進歩に対して暗号技術側がどこまで先回りして備えられるか」にある。誤り訂正や論理量子ビットの技術進歩が想定以上のペースで進めば、量子耐性を見据えた暗号技術への移行準備は一段と重要になる。
Bitcoin Magazineも、過度な警戒は不要だとしながら、量子コンピュータの進展可能性を軽視すべきではないと強調した。ビットコインネットワークに直ちに脅威が及ぶ状況ではないものの、今後10年を見据えた長期的なセキュリティ課題として、量子コンピュータ時代に備えた暗号技術移行の議論が重要性を増しそうだ。