【マウイ(米国)=DigitalToday ソク・デゴン記者】オンデバイスAIエージェントの本格普及には、クラウド並みの性能と、複数端末にまたがって引き継げるユーザーのコンテキストが必要――。Qualcommのクリスティアーノ・アモンCEOとLiquidAIのラミン・ハサニCEOは23日(現地時間)、「Snapdragon Summit」2日目の基調対談でこうした認識を示し、端末群をつなぐメモリー層を中核とする新たなアプローチを紹介した。
ハサニCEOはまず、AIの性能向上と実際の事業価値の間にはなお大きな隔たりがあると指摘した。「現在のAIモデルが個人の生産性を押し上げる一方で、企業の変革はそれに追いついていない」と述べ、能力を実運用の価値に結び付けることが課題だとの認識を示した。
そのうえで、AIエージェントが数十億台規模の端末で使われる計算基盤になるには、5つの変化が必要だと説明し、その1つとして品質を挙げた。「デバイスAI、ローカルAIの革命がまだ本格化していない理由の1つは品質基準にある。最先端のクラウドAIに近い性能へ、端末側を引き上げる必要がある」と語った。
もう1つの要件として挙げたのが、コンテキストの連携だ。ユーザーは、ある端末で使っていたAI体験や嗜好を別の端末でもそのまま引き継ぎたい。そのためには、複数の端末を1つの体験として束ねるメモリー層が必要だとした。信頼性やパーソナライズを支える情報は、端末内で扱うべきだとも強調した。
ハサニCEOは「このエージェントを信頼できるのは、自分の端末上で動作するからだ。規模は能力を高め、適応はパーソナライズを実現する」と説明。アモンCEOも「クラウドかエッジかという二項対立は意味がない。誰もが自分の端末を持ち、そこで行うことはユーザーごとに固有だ」と応じた。ハサニCEOは、現在のクラウド偏重の流れをローカルAIで補完するハイブリッド型の環境が次の成長機会になるとの見方も示した。
LiquidAIが提示したのは「Liquid Context on Snapdragon」だ。これは2層構成で、端末利用のなかで蓄積される体験や履歴を読み取り、圧縮して保持するメモリー層と、その情報を基に処理を実行するエージェント層から成る。保持したコンテキストは端末間で移行でき、別の端末上のAIでも引き継げるという。
ハサニCEOは「今回の革新は、エージェントがいつ価値を提供すべきかを理解できるようにした点にある」と述べた。さらに、ユーザーが都度システムに指示を出す方式は1世代前の発想であり、将来的にはリクエスト前に先回りして処理することが目標だと説明した。
処理はSnapdragon内の複数の演算ユニットに分散される。ハサニCEOによれば、エージェントの実行はHexagon NPUが担い、CPUはエージェントのサンプリングを担当する。Qualcommも事前説明で、Oryon CPUが計画とオーケストレーションを担い、Hexagon NPUがAI推論を処理する構成だと説明しており、今回の発表はその活用事例の1つと位置付けられる。
◆自動車・スマートフォン・ウェアラブル向けに展開、Mercedes-Benz車には導入済み
ハサニCEOはSnapdragonを採用した理由について、「ユースケースが高度になるほど、処理は端末の近くにある必要がある。ユーザーは情報を継続的に収集するシステムに常時アクセスできなければならない」と説明した。LiquidAIは、第2世代のLiquid Foundation Model(LFM)をSnapdragon向けに設計したことも明らかにした。
同社はこの製品をOEM向けに提供する。ハサニCEOは、自動車、スマートフォン、ノートPC、ウェアラブルなど幅広い機器に適用可能で、OEMが自社製品に組み込める形だと述べた。自動車分野ではすでにMercedes-Benzと協業しており、Snapdragonベースの車載環境で、完全ローカル型の車載インテリジェンスを実現しているという。
ハサニCEOは「これはSnapdragonチップ上で実際に展開された実運用レベルのAIだ。車内体験の変革を目指す自動車OEMの関心は非常に高い」と述べた。さらに「モバイルやウェアラブルでは、端末間で共有されるコンテキストと、先回りして動くエージェントに大きな機会がある」と付け加えた。