画像は中国のショートドラマプラットフォーム「DramaBox」の「彼の最も残酷な後悔」の一場面(画像=DramaBox)

1話1〜3分のショートドラマが、オンライン動画配信サービス(OTT)の新たな競合として急速に台頭している。中国発のショートドラマプラットフォームを中心に利用が広がっており、LilShortはモバイルの平均利用時間でNetflixやDisney+、Amazon Prime Videoといった主要OTTを上回った。市場は生成AIの活用を追い風に拡大する一方、過度な課金やコンテンツ品質、権利処理を巡る懸念も強まっている。

市場調査会社OmdiaがSensor Towerのデータを分析したところ、LilShortの2026年4〜6月期の1日当たり平均モバイル利用時間は約38分と、前四半期比で40%増加した。Netflix、Amazon Prime Video、Disney+を上回る水準だという。

ショートドラマアプリ全体でも利用時間の伸びが目立つ。2026年4月時点の世界のショートドラマアプリの1日当たり平均利用時間は25分と、2025年1月比で85%増加した。同期間のOTTは約35分で、その差は10分まで縮小した。

ショートドラマは、1〜3分程度の短いエピソードを数十話連ねた連続ドラマを指す。スマートフォン向けの縦型画面で制作されることが多く、各話にどんでん返しや葛藤を盛り込むクリフハンガー型の構成で、次話の視聴を促すのが特徴だ。

短尺でモバイル視聴に最適化されたスタイルを追い風に、市場も急拡大している。Omdiaによると、世界のショートドラマ市場の売上高は2025年の110億ドルから2026年には140億ドルへ拡大し、約27%成長する見通しだ。

アプリ内課金も増加している。Sensor Towerによると、2026年1〜3月期の世界のショートドラマアプリのアプリ内課金売上高は約7億5000万ドルで、前年同期比20%増だった。

◆生成AIで低コスト量産、中国勢が供給拡大

ショートドラマは、低い制作単価と短い制作期間を武器に供給量を急速に増やしている。シリーズ全体の制作費が、一般的なテレビドラマ1話分の制作費の数十分の1にとどまるケースもあるという。

ロイターなどによると、米国のショートドラマ業界では、1シリーズ当たりの制作費は10万〜30万ドル程度。1話45秒〜2分、全50〜75話が標準的で、総尺は約40〜150分となる。これに対し、通常30分のテレビシットコムは、1話当たりの制作費だけで200万〜400万ドルに達する。

生成AIの導入で、制作費と制作期間はさらに圧縮されている。脚本作成から画像・映像生成、翻訳、吹き替えまで、制作工程の幅広い部分でAIの活用が進む。

中国国家広播電視総局によると、2026年1〜8月に中国で公開されたショートドラマは約43万本と、2025年通年の公開本数の13倍に達した。このうち90%超はAI技術を活用して制作されたという。

収益化の仕組みも、月額課金が中心のOTTとは異なる。序盤を無料で見せた後、広告視聴やコイン購入で次話を開放する形式が主流だ。週単位のサブスクリプションも販売されているが、料金は一般的なOTTの月額料金より数倍高いとされる。韓国のアプリストアでは、LilShortの週次サブスクリプションは2万2000〜2万9000KRW、単品のコイン商品は7700〜3万3000KRWで販売されている。NetShortの週次VIP料金も1万9000〜3万3000KRWの水準だ。

◆過度な課金や「AIスロップ」懸念、OTTも縦型で対抗

急成長の一方で、利用者保護とコンテンツ品質を巡る懸念も強まっている。短いエピソードと反復課金を組み合わせた仕組みが、過度なのめり込みや過剰消費を招きかねないためだ。

問題は品質や権利面にも及ぶ。似通った物語や場面の反復、完成度の低いコンテンツが大量に流通する「AIスロップ」への懸念に加え、著作権侵害や俳優の肖像権・音声権の侵害も指摘されている。

中国政府はこうした副作用を規制対象として明示した。9月1日に施行した「マイクロドラマ(ショートドラマ)発展管理方法」では、プラットフォームのアルゴリズムを定期的に審査・評価するよう求め、利用者の依存や過度な消費を誘導するアルゴリズムモデルを禁止した。有料コンテンツについては、課金情報を明確に表示することも義務付けている。

コンテンツ管理も強化している。中国国家広播電視総局は2026年、有害・低俗コンテンツや児童に不適切な内容、著作権侵害などを理由にショートドラマ6万8000本を削除し、1200余りのアカウントを処分した。処分対象の90%超はAI制作物だったという。

ショートドラマの利用時間が急拡大するなか、NetflixやTvingなど既存OTTもモバイル利用者の取り込みに向け、縦型動画機能を強化している。Netflixは7月、韓国のモバイルアプリに縦型動画フィード「クリップス」を導入した。Tvingも「ショーツ」タブで、オリジナルシリーズやバラエティー、スポーツの主要場面を縦型で配信している。

もっとも、既存OTTが縦型動画を本編視聴へ誘導する補完機能として位置付けるのに対し、ショートドラマは当初からモバイル環境で短いエピソードを連続視聴させる前提で設計されている点が異なる。中国系ショートドラマプラットフォームの利用時間が伸びるにつれ、既存OTTとのモバイル利用時間を巡る競争は一段と激しくなりそうだ。

OTT業界関係者は「OTT事業者にとっては、利用者の滞在時間と再訪率を高め、契約を維持することが重要だ。ショートドラマが反復アクセスと連続視聴を引き出せば、十分に脅威になり得る」と指摘した。その上で「海外のショートドラマプラットフォームに国内事業者と同水準の規律が適用されなければ、コンテンツや課金を巡る競争でも逆差別の問題が生じる可能性がある」と話した。

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