中国の電気自動車(EV)メーカーXiaopengは7日、ヒューマノイドロボット「Iron」の新たな生産ラインを公開した。主要工程の自動化率は80%を超え、組立を終えた機体が自走でラインを離れる様子も披露した。年内の量産開始も目指す。
米ITメディアEngadgetによると、Xiaopengは同日、ヒューマノイドロボット向け生産ラインの稼働を正式に発表した。自動車事業で培った品質管理システムをロボット生産にも適用し、増産時にも品質の安定確保を図る。
会長兼CEOのホー・シャオペン(He Xiaopeng)氏は「今日の一歩は小さいが、Xiaopengはまったく新しい製品群のための生産ラインを構築している」とコメントした。同社は、完成したIronが遠隔操作なしでラインから歩いて出る様子を公開し、開発段階から製造段階への移行を印象づけた。
もっとも、このデモだけでIronの実運用時の性能を判断することはできない。Xiaopengは現行ラインの生産能力や、歩行デモ前に実施した試験内容の詳細を明らかにしていない。年内量産を掲げる以上、実際の生産規模や商用環境での性能が今後の焦点となる。
初期の導入先も示した。IronはまずXiaopengの自社店舗や自社施設に配置し、来店客への案内、ツアー対応、販売支援などを担う予定だ。中国および海外市場での正式発売と引き渡しは2027年を計画しているが、米国市場への投入有無や価格は公表していない。
ハードウェア構成と演算性能の概要も公開した。Xiaopengによると、Ironは全身で76、両手でそれぞれ21の自由度(DOF)を備える。DOFはロボットが独立して動かせる軸の数を示す指標で、こうした関節構造を基に、人が使う空間での歩行や物体搬送に対応できるよう設計したという。
AI処理では、「Turing」AIチップを3基搭載し、最大2250TOPSの演算性能を確保した。AIモデルをオンデバイスで直接動作させることで、遠隔操作なしでも複雑な作業を実行できるとしている。ただ、演算性能の高さだけでは、実環境でどこまで幅広い状況に対応できるかはなお見通せない。
安全性も商用化に向けた課題の1つだ。Xiaopengは、外装構造を柔軟性と安全性に配慮して設計したとしているが、独立した安全性評価の結果は示していない。顧客と直接接する用途を想定するだけに、実環境での安定稼働が重要になる。
Xiaopengの取り組みは、EVメーカーが自動車製造とAIの技術基盤をヒューマノイドロボットへ広げる流れと重なる。Teslaも「Optimus」の生産に向け、Model SとModel Xの生産ライン転用計画を進めている。もっとも、現時点で両社の生産体制や性能を単純比較するのは難しい。
ヒューマノイドロボットの生産や現場導入では、先行事例も出始めている。Figure AIは4月、Figure 03を350台超生産し、1時間当たり1台の生産サイクルを実証したと発表した。ただし、この台数には社内開発やデータ収集向けの機体も含まれており、すべてが顧客向け出荷分とは限らない。
BMWでは、Figure AIの前世代機「Figure 02」が米サウスカロライナ州スパータンバーグ工場で実作業を担った。溶接工程で使う板金部品のピッキングと搬送を担当し、10カ月にわたってBMW X3の3万台超の生産を支援したという。BMWによれば、Figure 02は10時間のシフトで9万点超の部品を移動し、稼働時間は約1250時間だった。
Xiaopengにとって次の焦点は、ロボットがラインを自走で離れる演出そのものではなく、量産体制をどこまで立ち上げられるかにある。店舗や自社施設といった運用環境で安定して業務をこなせるか、また年内の量産目標をどの水準で実現できるかが、商用化を占うポイントになりそうだ。